研究課題/領域番号 |
23360021
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
畑 浩一 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30228465)
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研究分担者 |
永井 滋一 三重大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40577970)
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キーワード | X線顕微鏡 / 超高真空走査型電子顕微鏡 / 電界放射型陰極 / 液体金属電子源 / Taylorコーン / リチウム |
研究概要 |
1.Li-LMESに最適化された電子光学系の設計製作 Li-LMESは、W<111>単結晶電界放射陰極に超高真空中でリチウムを真空蒸着したものである。この陰極をリチウムの融点(180℃)以上に加熱し高電圧印加すると、溶融したリチウムは頂角98.6°の微小なTaylorコーンを形成し、コーン先端から電界放出により電子ビームが放出される。Taylorコーン形成は動的な現象であるため、電子放出中の形状は解析的には求まっていないが、これまで実験的に判明しているソースサイズ(-10nm)、ビーム開き半角(-10°)およびdI/dΩ(-20mA/sr)などの測定データを基に、マイクロアンペア級の大電流を低損失でターゲット上に輸送し、かつ100nm以下の焦点径を形成可能な電子光学系をCAD設計した。この電子光学系は、コンデンサーレンズとして静電型Butlerレンズを、また対物レンズとしてセミインレンズ型の強励磁磁界レンズを採用し、非点補正、軸調整機能を備えた2段の不等分割12極子静電型偏向器とで構成されたコンパクトな構造とした。設計値を基に実機製作を完了した。 2.ナノフォーカスX線源評価機の製作 Li-LMESの寿命はタングステン針表面からのリチウムの蒸発により制限される。そこで長寿命化の対策として、放出電流をモニター信号として電流の減少に応じて逐次蒸着を行う制御電源を製作し現在数10時間の寿命を得ているが、既存の蒸着ボートでは分子線の指向性が劣るために真空槽内の汚染が問題となっている。また、Li-LMESから得られた電子ビームのフォーカス状態をリアルタイムで把握し、調整するためには走査型二次電子像の検出は必要不可欠である。そこで、上記1で製作した電子光学系と、リチウム供給用に分子線の指向性に優れた超高真空エバポレータおよび超高真空対応二次電子検出器を搭載したナノフォーカスX線源評価機の製作と動作確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の当初計画では、(1)Li-LMESに最適化された電子光学系のCAD設計、(2)これを搭載した超高真空対応の評価機の製作、(3)動作確認、の3項目を挙げたが、いずれも予定通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度:ナノフォーカスX線源応用へのLi-LMESの有効性実証 H23年度度に製作した評価機により、得られたX線像から,像分解能、X線強度、電子ビームの焦点径およびビームの安定性を詳細に評価する。 H25年度:ターゲット材料・冷却構造および実用化の検討 所望波長が得られるターゲット金属種および、高電流密度となるターゲットの冷却構造など、実用に向けた問題点の洗い出しとその対策を検討する。
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