研究概要 |
平成23年度はグラフェン/C_<60>グラフェン界面モデルを(グラフェン)_n/C_<60>/(グラフェン)_n多層界面モデルに拡張して、(グラフェン)_n/C_<60>/(グラフェン)_n多層界面の超潤滑特性の予備シミュレーションを開始した。 (1)荷重依存性~グラフェンの変形効果C_<60>分子とグラフェンの接触界面で、グラフェンシートにC_<60>分子由来の凹凸のしわが出来、凹部にC_<60>分子が引っ掛かってスティック-スリップ運動が起きる事が見出されている。外部のグラフェン層をN=2から1層ずつ増やしていったところ、荷重が増加するほど、N=2の変形量(凹凸の振幅)と、N≧3の変形量とのずれが大きくなり、グラフェン層数Nが増加するほど境界条件の影響を受けにくくなることが分かった。例えば平均荷重=5.8nN以下の場合、N=2の場合の凹凸振幅と比較して、N≧4のグラフェン層の凹凸振幅が約10%以下に抑えられることが分かった。 (2)水平力曲線のFFT解析申請者のこれまでの研究で、グラフェン/C_<60>/グラフェン界面において超潤滑に顕著な異方性が出現している。この異方性は同様に、(グラフェン)_n/C_<60>/(グラフェン)_n多層界面でも現れることが期待される。荷重と走査方向によって、グラフェン/グラフェン界面、C_<60>グラフェン界面の滑りのどちらが超潤滑特性を決めるのかを明らかにすることは摩擦力の系統的制御に重要である。そこで、先ずグラフェン/C_<60>/グラフェン界面の水平力曲線のFFT解析を行ったところ、FFTスペクトルに上層グラフェンのスライド方向の格子積層周期に対応するピークが現れ、動力学における格子の整合性の影響を指摘することに成功した。(Sasaki et al., Tribology Online,印刷中) (3)カーボンバンドルとAFM探針の凝着、摩擦カーボンハイブリッド構造の例としてカーボンナノチューブのバンドル構造を考え、これに原子間力顕微鏡(AFM)探針を押し付けて戻す計算および、走査する計算を行い、その凝着・摩擦特性を議論したところ、座屈に由来する個々のカーボンナノチューブの不連続変形の効果が垂直力曲線および水平力曲線に現れることを明らかにした。(Sasaki et al., e-J.Surf.Sci.Nanotech. 9, 409(2011)) (4)グラフェンの引き剥がしの測定との比較カーボンハイブリッド構造の例としてグラフェンシートを考え、AFM探針先端に付着させたグラフェンを剥離・接着するシミュレーションを行い、実際の実験測定との比較を行ったところ、面接触領域でのスティック・スリップ運動に由来する準周期的波形が田現し、その間隔がグラファイトの格子定数にほぼ等しくなることが、理論-実験の双方で確認された。(Ichikawa, Itamura, Sasaki, Miura et al., APEX,印刷中)
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