研究課題/領域番号 |
23360023
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
佐々木 成朗 成蹊大学, 理工学部, 教授 (40360862)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トライボロジー / フラーレン / 走査プローブ顕微鏡 / 表面・界面物性 / ナノ材料 / 超潤滑 / 剥離 / グラフェン |
研究概要 |
平成24年度は以下の多層界面モデルの解析を行った。 (1)グラファイト系((グラフェン)n/グラフェン/(グラフェン)n多層界面モデル) 層数nを増加させた時の水平力曲線の変化について調べた。層数nを1から5まで増加させた時、いずれの場合も、二種類の波形A、Bを組み合わせた水平力曲線が得られた。A、Bの最大値をそれぞれfAgr、fBgr (fAgr > fBgr)とすると、nの増加に伴い、fAgrは減少するが、fBgrはほぼ一定であった。nを1から5まで増加させた時、波形Aはのこぎり波形のままであったが、波形Bは正弦波形からのこぎり波形に変化した。 (2)C60ベアリング系((グラフェン)n/C60/(グラフェン)n多層界面モデル) 層数の増加に伴い、三種類の波形A’、B’、C’を組み合わせた水平力曲線が得られた。ただし、B’はn=2以上で現れる。A’、B’、C’の最大値をそれぞれfA’c60、fB’c60、fC’c60 (fA’c60 > fB’c60> fC’c60)とすると、nの増加に伴い、fA’c60は減少するが、fB’c60、fC’c60はほぼ一定であった。グラファイト系同様、nの増加に伴い、波形A’はのこぎり波形のままで、波形C’は正弦波形からのこぎり波形に変化した。 (3)グラファイト系とC60ベアリング系の比較 水平力の最大値はfAgr > fA’c60となり、多層構造であってもC60ベアリング系の超潤滑性の方が優れている事を示している。ここでfAgr 、fA’c60は共に最外層グラフェンの走査方向に同期した内部グラフェンやC60分子の並進移動によって決まる値である。また、層数nの増加に伴い、fAgr→0.04nN 、fA’c60→0.02nNに収束する傾向を見せた。このようにC60ベアリング系の水平力の最大値は、グラファイト系の半分に減少することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(グラフェン)n/グラフェン/(グラフェン)n多層界面モデルと、(グラフェン)n/C60/(グラフェン)n多層界面モデルの両方に関して、層数n=1~5の場合の[1100]方向走査の予備計算を行い、水平力曲線の特徴を把握する事が出来た。従って、n>5の場合も含めた多層モデルの計算を精度良く進め、各層の原子スケールの振る舞いから多層系の超潤滑のメカニズムを議論する準備が整ったものと判断される。以上を鑑みて、本プロジェクトの最終目的(多層系の超潤滑メカニズムの解明)に向けた二年度までの計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、(グラフェン)n/C60/(グラフェン)n多層界面系の最外層グラフェンをスライドさせた時に得られる水平力曲線の微細形状を、グラフェン/C60/グラフェン界面、グラフェン/グラフェン界面の原子スケールの並進・回転運動と結びつけて理解する事を目的とする。そこから多層系の超潤滑メカニズムのシナリオを引き出す。また、スライド方向が整合な方向と不整合な方向を比較する事により、上記のシナリオの妥当性が検証されることが期待される。
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