平成25年度は以下の計算および解析を行った。 (1) (グラフェン)n/C60/(グラフェン)n多層界面の超潤滑(佐々木・板村、研究協力者1名:成蹊大) 平成24年度に引き続き、グラフェン/C60/グラフェン界面を(グラフェン)n/C60/(グラフェン)n多層界面に拡張して、最外層の滑りに対する各層の滑り(並進運動)や回転が系の超潤滑に与える影響を全エネルギー計算で調べた。特にn=2の場合、つまり二層グラフェンでサンドウイッチした分子ベアリング系の場合に対して、整合方向走査の詳細な解析を行ったところ、単層グラフェンで挟んだ時とは異なり、C60分子は明確なスティック・スリップ運動を行った。この理由として、単層ベアリングでは、C60-グラフェン間の積層関係のみがポテンシャルエネルギーを決めていたが、二層ベアリングでは、C60-グラフェン間だけでなくグラフェン-グラフェン間の積層関係もポテンシャルエネルギーに寄与するため、六員環がAB積層的に配置しやすくなり、より低いエネルギーパスが開くようになったことが考えられる。 (2) グラフェン/C60/グラフェン系の引き剥がし(佐々木・板村、研究協力者1名:成蹊大) 実験グループの共同研究者(愛知教育大・三浦浩治 教授)が分子ベアリング系の引き剥がしの予備実験を行い、水平力曲線を測定したところ、C60分子間距離に対応する周期性を観測した。この結果を解釈するため分子ベアリング系の引き剥がし計算を行って水平力曲線を計算したところ、C60分子間距離に対応する周期性を反映するコラゲーションが、原子スケールのコラゲーションで変調を受けているような力曲線が現れた。
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