研究概要 |
1.周期反転GaAs/AlGaAs導波路デバイスの結晶性等の評価 副格子交換エピタキシーと周期エッチング,冊E再成長技術を用いて作製した周期空間反転GaAs/AlGaAs導波路に対して,精密X線回折,TEM,SEM,カソードルミネッセンス(CL)などを用いて,その結晶性などを評価した。その結果,III族原子のGaAs(100)面上の異方性拡散に起因して組成変調が生じていることを初めて明らかにした。また,この組成変調と成長レート変調はともにMBE再成長時の基板温度の低下によって低減できることを見いだした。一方,低温再成長をおこなうと,Asアンチサイトと考えられる点欠陥密度が上昇すること,同時に{111}A面上の双晶面欠陥が大量に発生することも見いだした。面欠陥は成長温度が低いほど,また,AlGaAsのAl組成が高いほど発生しやすい。 2.低温MBE再成長の効果の検証 3つの再成長温度(530℃,430℃ and 350℃)で作製した周期反転GaAs/AlGaAs導波路についで比較した結果,低温成長によってレート変調による段差と組成変調は低減できるものの,380℃での再成長温度では欠陥密度が高くなってしまうことがわかった。現状では,430℃近辺が最適成長条件となっているものと考えられる。 3.電流注入によるゲイン等のシミュレーション AlGaAsダブルヘテロ構造導波路型パラメトリックデバイスにおける1.5μm帯波長変換に対する電流注入の効果をシミュレーションによって見積もった。その結果,バンド端発光性再結合による利得が長波長側の自由キャリア吸収による損失の総計を容易に上回ることが確認できた。これによって,電流注入ゲインが波長変換デバイスの性能を実際に向上させられるとの見通しが得られた。 4.高屈折率差複屈折位相整合波長変換を目指した扁平AlGaAs/Alox導波路デバイス 扁平AlGaAs/Alox導波路を作製し,波長1.5μm帯SHG実験をおこない,複屈折位相整合が達成できることを初めて実験的に実証した。また,TEM観察によって,このAlGaAsコアには欠陥が存在しないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で今年度中におこなう予定であった結晶欠陥の評価について,概ね計画通りに進めることができ,十分な成果が得られた。反転構造のないデバイスでの2光子吸収損傷の評価は実施することができなかったが,当初の予定よりも先行して電流注入ゲイン実現へ向けたシミュレーションとドーピングの実験をおこなっており,目的達成へ向けて順調に進展しているといえる。
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