研究概要 |
副格子交換エピタキシーと周期エッチング,MBE再成長技術を用いて作製した周期空間反転GaAs/AlGaAs導波路に対して精密X線回折,TEM,SEM,カソードルミネッセンス(CL)などの手法を用いてその結晶性と欠陥について詳細にに調べた。また,AFMによる表面段差評価,CLによる組成変調評価,ファブリ・ペロー法による波長1.55 um帯の伝搬損失測定,波長1.064 umのポンプ光と波長1.55 um帯のシグナル光の差周波発生(DFG)による波長3.4 um帯アイドラ光発生効率の測定をおこなった。4つの異なる基板温度(530℃, 460℃, 430℃, 400℃) で導波路を作製して比較をおこなった結果,伝搬損失は成長温度460℃で最小となることが明らかとなった。成長温度の低下とともに表面段差と組成変調は小さくなるが,430℃以下では結晶欠陥((111)A面上の双晶欠陥)が発生し結晶性が低下することがこの結果に結びついていると考えられる。成長温度460℃のデバイスで得られた伝搬損失1.3 dB/cmはこれまでの周期空間反転GaAs/AlGaAs 導波路の伝搬損失として最小である。また,基板温度460℃で作製したデバイス長5.1 mmのQPM-DFGデバイスにおいて,DFG効率19 %/Wが得られた。これは理論予測の値とほぼ一致しており,また,これまでで最大の規格化変換効率である。 一方,電流注入によるゲインとその波長変換特性への影響についてのシミュレーションを進め,具体的なデバイス構造をモデル化して計算した結果,概ね妥当な電流注入条件下で変換効率の向上が期待できることがわかった。上記の線形損失低減の実験結果とあわせて,電流注入波長変換デバイスの妥当性が示せたものと考えてている。
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