研究概要 |
生命生存可能な地球型の系外惑星を探索するためには,極めて高精度なドップラー分光装置が必要となる.本研究の目的は,非線形ファイバにより発生したスーパーコンティニューム(SC)光を分光器のモノサシとして,10-9の高精度な分光技術を開発することである.周波数間隔が大きく(12.5GHz),広帯域(1200~1800nm)に均一な強度をもつ光周波数コム(天文コムと呼ぶ)が必要となるが,このようなSC光を発生することは容易でない.そこで光パルスシンセサイザを用いた新しいSC発生法を提案し試みた.また,吸収線スペクトルを微小に周波数シフト(約1MHz)することで,分光器のゆらぎと望遠鏡からの星像光のゆらぎを弁別する新しい分光較正法を検討した. (1)天文コムの広帯域化 光パルスシンセサイザで繰り返し周波数12.5GHz,パルス幅4psの光パルスを合成し,長さ1.1kmの分散減少分散フラットファイバ(DDDFF)に入射した.分散減少部分によるソリトン断熱圧縮によりパルスのピークパワーを高め、周波数帯域が約300nm,コム周波数間隔12.5GHzのスーパーコンティニュウム光を発生した.変調不安定性による雑音発生を防ぐためファブリペローフィルタを導入し,高コントラストなコムが得られた. (2)天文コムの絶対周波数確度および周波数安定化 1週間から1ヶ月に渉る天体観測において,周波数安定性を0.2MHz以下に抑えなければばらない.最近市販されるようになった,狭線幅の半導体レーザー(0.1MHz以下)をHCNガスの吸収線で安定化して,絶対周波数確度0.2MHz以下,周波数安定性0.2MHz/月を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
周波数帯域が約300nm,コム周波数間隔12.5GHzのスーパーコンティニュウム光を発生した.また狭線幅の半導体レーザー(0.1MHz以下)をHCNガスの吸収線で安定化して,絶対周波数確度0.2MHz以下,周波数安定性0.2MHz/月を達成した.これらの成果により,当初の目標に近い成果が得られつつある.
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