研究課題/領域番号 |
23360030
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
富田 康生 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50242342)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 量子ドット / ナノ材料 / 応用光学・量子光工学 / フォトポリマー / 非線形光学 |
研究概要 |
イオン液体モノマーへの半導体CdSe量子ドット(CdSe QD)の高濃度分散について、CdSe QD水溶液からCdSe QD粉末を生成してイオン性モノマーへ分散する方法(粉末法)を導入することを試み、数vol.%の分散濃度が可能であることを熱分析方法により確認出来た。この粉末法を用いて作成したCdSe QDーフォトポリマーナノコンポジットへの一様露光照射により均質に光重合させたCdSe QDコンポジット膜に対する非線形電気感受率の入射光強度依存性をZ-scan法で測定した。その結果、得られた非線形過飽和吸収特性と3次および5次の非線形屈折率効果が静電法で作成したCdSe QDコンポジット膜と概ね同様の特性であることを確認した。さらに、縮退多光波混合法によって自己回折光信号の入射光強度依存性を詳細に測定した結果、3次と5次の自己回折光信号の入射光強度依存性が理論で予想される3乗および5乗の依存性に比べて明らかに低い指数であることがわかった。また、非線形透過率の入射光強度依存性を測定した結果、高光強度入射において明らかに過飽和吸収理論モデルよりも光吸収が増加していることがわかった。これらの原因として、CdSe QDの表面欠陥準位による光励起キャリアの捕獲に起因する過飽和光吸収の減少(光吸収の増加)が予想された。そこで、合成したCdSe QD水溶液のフォトルミネッセンススペクトルを詳細に測定した結果、フォトルミネッセンススペクトル幅が予想される値に比べて大幅に増加していることが判明した。この結果から、作成している半導体CdSe量子ドットのサイズが2nm程度であることにより[第一電子―正孔対共鳴波長が光重合と非線形光学測定に用いるパルスレーザ波長(532nm)よりも短くする必要があるため]、CdSe QDの表面状態がフォトルミネッセンス特性に大きく影響を及ぼしていることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、静電法により高濃度分散した半導体CdSe 量子ドットーフォトポリマーナノコンポジットの非線形光学効果 について測定し、Z-scan 法と縮退多光波混合法により3次に加えて5次の光非線形性が発現することを見出せたこ と、第二に、非線形Bragg 回折の観測および特性評価が実施できたこと、第三に、半導体CdSe 量子ドットを静電法に加えてパウダー法により高濃度分散した半導体CdSe 量子ドットーフォトポリマーナノコンポジットが作成し非線形光学効果の観測と評価を行えたことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに観測された半導体量子ドット表面欠陥準位での光励起キャリアの捕獲効果とそれに伴う非線形光学効果の 低減の問題についてさらなる究明を行う必要がある。さらに、この表面欠陥を除去するためコアシェル型構造を導 入した半導体量子ドットの合成を実施する必要もある。加えて、非線形フォトニック結晶構造形成による非線形応 答特性を実験及び理論の両面から究明するとともに、高分子ソフトマター系の相転移ダイナミクスと秩序形成過程 の理論的解明についてもナノ微粒子分散の効果を考慮したモデル化を行い推進する。
|