水中合成CdSe量子ドット(CdSe QD)水溶液のフォトルミネッセンス(FL)スペクトルを詳細に測定し、FLスペクトル幅が200nm程度の幅まで大幅に増加していることを観測した。CdSe QDサイズが2nm程度でありCdSe QD表面状態(表面欠陥)がFLスペクトル特性に大きく影響を及ぼしていることが原因であることがわかった。この表面欠陥はCdSe QD-フォトポリマーナノコンポジット(QDNPC)膜での過飽和光吸収低減を及ぼす光黒化現象の増加に大きく寄与することがわかったため、表面欠陥低減化のためCdSe QDサイズの増加を合成時間制御により試みた。その結果、CdSe QDの第一電子-正孔対共鳴波長を30nm程度まで制御出来た。しかし、CdSe QDサイズの増加は30%程度に留まり、合成時温度制御も必要であることがわかった。また、コアシェル型構造の導入についても初期検討を行った。次に、静電法によるイオン液体モノマーへのCdSe QDの高濃度分散化検討を行った。その結果、これまで得ていた2vol.%CdSe QD分散よりも十分高い10vol.%までのCdSe QD高濃度分散に成功するとともに多官能アクリレートモノマー共分散のQDNPC膜へのBraggホログラム記録実験を行った。その結果、多官能アクリレートモノマー(MA)9vol.%分散時においてCdSe QD7vol.%分散で屈折率変調0.011が得られ、これまで得られている値(=0.005)の2倍程度の増大化に成功するとともに、MA分散濃度最適化によりMA3vol.%、CdSe QD6vol.%分散で屈折率変調0.017(3倍強の増大化)を得た。さらに、この分散濃度条件において一様露光QDNPC膜の非線形電気感受率の測定と非線形Bragg回折の測定を行いCdSe QD高濃度分散化による非線形光学効果の増大を確認した。
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