研究課題/領域番号 |
23360032
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
杉田 篤史 静岡大学, 工学部, 准教授 (20334956)
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研究分担者 |
間瀬 暢之 静岡大学, 工学部, 准教授 (40313936)
川田 善正 静岡大学, 工学部, 教授 (70221900)
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キーワード | 非線形光学 / プラズモニクス / ポリマーフォトニクス / ナノフォトニクス |
研究概要 |
回折限界よりも微細な空間領域において光操作を可能とするナノフォトニクスが大きな注目を集めている。ナノフォトニクスの基本原理は金属表面における伝導電子の集団励起状態である表面プラズモンに伴う増強光電場を光源として用いることにある。一般的に表面プラズモンの励起は金や銀微粒子表面で実現されるが、これらの金属材料を用いた場合の励起可能な周波数領域は可視光領域に限られる。励起可能な周波数領域を紫外線領域へ拡張することはその応用範囲を広げる上で大きな意義がある。本研究ではこの課題を解決する手段として表面プラズモン増強光電場のための非線形光学波長変換素子を提案し、その開発を行うことを目的とした。ここで提案する表面プラズモン支援型波長変換ナノフォトニクス(SP-NLO-WCNP)システムの基本構成は表面プラズモン増強光電場を発生するための金属微粒子と非線形光学波長変換相互作用を担う非線形光学ポリマーとから構成される複合構造体である。 平成23年度は提案技術の基本原理の実証、すなわち、本当に表面プラズモン増強光電場により非線形光学波長変換動作を実現することが可能であるか否かについて検討した。研究では表面プラズモン増強光電場を発生するために銀もしくは金薄膜をコートしたプリズムを用いたクレッチマン型励起法を採用し、非線形光学材料として先行研究にて開発したアモルファス高分子強誘電体中に有機色素分子をドープしたホストゲスト高分子非線形光学材料を利用した。研究の結果、表面プラズモン共鳴条件にてフェムト秒光パルスを照射したところ、予想通り表面プラズモン増強光電場による高分子非線形光学材料中にて第二高調波発生を確認することに成功した。また、時間分解分光法により第二高調波の時間相関を測定したところ、SP-NLO-WCNPの非線形光学感受率の応答時間は光パルスのパルス幅である150fs以下であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究で開発を目指す表面プラズモン支援型微小非線形光学素子の基本原理は金属表面に発生する表面プラズモンによりポリマー非線形光学材料中で波長変換動作を実現することにある。平成23年の研究によりプリズムを利用した表面プラズモンにより期待通りの波長変換動作を確認することができたことから、提案原理の証明に成功しており、平成23年度の目標は達成していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は金属ナノ構造体表面に励起される表面プラズモン増強光電場を利用した非線形光学波長変換動作について検討する。金属ナノ構造体は平成23年度に電子線リソグラフィー法によって作製したものを用いる。また、平成23年度には励起光源である800nmのフェムト秒光パルスに対して近共鳴な非線形光学色素分子の開発に成功しており、これを従来の色素材料に加えることにより非線形光学材料の共鳴条件と波長変換動作の相関について検討する。更に、時間分解分光法により表面プラズモン増強光電場を高分子材料中における波長変換過程の基本動作原理についての解明を目指す。これらの実験を通じて、SP-NLO-WCNPにおける波長変換のための最適な条件を決定し、平成25年度に計画しているナノフォトケミストリーのための光源利用のための準備を行う。
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