研究課題/領域番号 |
23360032
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
杉田 篤史 静岡大学, 工学部, 准教授 (20334956)
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研究分担者 |
間瀬 暢之 静岡大学, 工学部, 准教授 (40313936)
川田 善正 静岡大学, 工学部, 教授 (70221900)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非線形光学 / プラズモニクス / 界面工学 |
研究概要 |
平成24年度は平成23年度に引き続き提案する表面プラズモン支援型微小非線形光学素子を支える2つの基盤要素材料である金属ナノ構造体および非線形光学ポリマーの開発を中心に推進した。金属ナノ構造体は局在表面プラズモンを励起するためのものであり、その形状を制御することにより共鳴励起周波数を調整することができる。本研究では非線形光学励起のための励起源としてモードロックチタンサファイアレーザーより発振する波長800nmの光パルスを利用する。そのため、光パルスの発振波長において金属ナノ構造体が表面プラズモン共鳴効果を示す必要がある。研究では直方体形状のロッド型金属ナノ構造体を製作した。金属ナノロッドの縦横比を調整することにより連続的に表面プラズモン励起波長を制御することに成功し、また目的とする800nmに共鳴を示す金属ナノ構造体を用意することができた。 一方、非線形光学材料は金属ナノ構造体表面に積層し、その非線形性を増強するために利用する。本研究で用意した非線形光学ポリマーはホストゲスト型と呼ばれる複合構造体より構成され、光との非線形光学応答を担うゲスト色素とそれを固定するホストポリマーより構成される。ゲスト色素の共鳴周波数は適切な分子設計を施すことにより自由に制御可能である。提案原理を実現するために非線形光学ポリマーの共鳴周波数が表面プラズモン共鳴周波数にできるだけ近づけることが望ましい。平成24年度はトリシアノフランと呼ばれる電子受容性の大きな部位を持つ色素の開発を進めた。研究の結果、汎用な色素よりも低周波数領域に共鳴を示す色素を開発することに成功した。 表面プラズモン支援型微小非線形光学素子の二次非線形光学特性は第二高調波と呼ばれる分光計測法によって評価する予定である。平成24年度の研究ではそのための分光光学系の整備にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は提案する表面プラズモン支援型非線形光学波長変換素子のプロトタイプデバイスを製作し、その波長変換動作について調査することである。素子は表面プラズモン励起のための金属ナノ構造体と非線形光学相互作用を担うポリマー材料という二つの基盤材料より構成される。平成23,24年度の研究を通じて励起光源として利用する発振波長が800nmの光パルスに対して表面プラズモン共鳴条件を示す金属ナノ構造体を製作することに成功した。また、同時に非線形光学ポリマーの開発も進め、励起光源として利用する予定の波長800nmに対して大きな非線形性を示す材料の開発にも成功した。このようにこれまでの研究により本提案技術を実現するための2つの基盤材料を用意することができ、残された課題は製作された微小非線形光学素子の動作確認のみである。すでに非線形光学特性を評価するための分光計測系の整備も終了している。これらの点を考慮すると、最終年度の平成25年度1年間で十分に計画された研究項目を検討することができるものといえ、研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画段階で取り上げた検討課題のうち、表面プラズモン支援型非線形光学波長変換素子の製作は終了しており、残された検討課題は微小非線形光学素子の基本動作の評価である。研究最終年度である平成25年度はこの課題の解決に取り組む。素子の非線形性の評価は、基本的な非線形光学効果の評価方法の中で最も基本的な手法の一つである第二高調波法によって実施する。本研究では素子の基本性能を特徴づける指標として、金属ナノ構造体の表面プラズモン共鳴周波数、非線形光学ポリマーの共鳴周波数について注目する。平成24年度までに確認した通り、表面プラズモン共鳴周波数は金属ナノ構造体の形状を制御することにより調節可能である。また、非線形光学ポリマーの共鳴周波数はポリマー中にドープする色素分子の種類を変えることによって調整する。平成24年度までの研究よりπ電子の共役長の異なる色素分子の合成が進んでおり、異なる色素分子を含む非線形光学ポリマー材料に対する非線形性の比較を行うことにより、非線形光学ポリマーの非線形性に対する依存性を決定することができる。これらの2つの共鳴条件に対する依存性より、表面プラズモン支援型非線形光学波長変換素子が最適な周波数変換効率を実現するための条件を決定する。 本提案技術は回折限界よりも微小な空間領域を照明するための微小紫外光源へ技術移転することが可能である。今回の研究では励起光光源として通常の伝搬光を利用しているが、微小光源として利用するためには近接場光学顕微鏡で用いられているようなファイバープローブを利用した励起を行う必要がある。これらの今後の技術展開を進める上で必要な課題について検討し、研究の総括とする。
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