研究課題/領域番号 |
23360033
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30332729)
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キーワード | フォトニック結晶 / シリコンカーバイド / ナノ共振器 / 二光子吸収抑制 / 光非線形現象 |
研究概要 |
本年度は(i)SiCフォトニック結晶の設計・構造最適化、(ii)SiCOI基板に対して光通信帯域のフォトニック結晶を形成するためのナノ構造加工技術を確立、(iii)光ナノデバイスに適したSiCOI基板の作製技術の確立に取り組んだ。 (i)SiCフォトニック結晶の設計・構造最適化:基本構造として光学的厚さが波長の数分の1程度のSiCスラブ(薄板)に対して空気孔が三角格子状に周期的に形成されたフォトニック結晶スラブを用いた。SiCの屈折率は赤外域で2.5程度と通常のフォトニック結晶の構成材料であるSiの屈折率3.4程度と比較すると小さいことを考慮してPBG帯域が最大化するように構造を最適化した。また光導波路の伝搬帯域およびナノ共振器構造のQ値を最大化できる構造を探索した。その結果、伝搬帯域100nm以上、Q値1000万以上という設計値を得ることができた。 (ii)SiCナノ構造加工技術の確立:現有のSiCOI基板に対して金属マスクを用いて(i)で検討した構造を形成するプロセスを確立した。様々なプロセス段階の最適化を行ったが、特に金属マスクからSiC層への転写を行うためのプラズマエッチングの条件が重要であった。ガス種の混合割合、流量、チャンバー圧力そしてプラズマのシース電圧変更等の条件を詳細に検討した。その結果、特性に最も大きく影響を与える穴側壁の垂直性において86度以上という高い値を得ることができた。 (iii)SiCOI基板作製技術の確立:基板メーカの協力を得て、本研究に適したSiCOI構造 (SiC/SiO2/Si構造)の作製を行った。京都大学側で高品質なバルクSiC基板およびベースとなるSi基板を購入し、SiO2の形成および貼り付けを行い、熱処理によって薄膜層を残してSiC基板を剥離するという工程に関して、様々な条件を最適化した。その結果、最終的にSiCOI構造を作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SiCフォトニック結晶の設計および作製技術およSiCOI基盤作製技術の確立という本年度の目標について、それぞれ計画通りに達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、SiCフォトニック結晶の設計および作製技術はほぼ確立した。SiCOI基盤の作製においては、表面のSiC層の膜厚調整の最適化をもう少し進める必要があるが、作製技術はほぼ確立した。今後はこの技術を用いてSiCフォトニック結晶ナノ共振器や導波路を作製して行く。ますは通常のSiフォトニック結晶と特性を比較することで、そのハイパワー安定性などを実証して行く。
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