ワイドギャップ半導体SiCを用いてフォトニック結晶デバイスの応用範囲を拡張することが本研究の目的である。これまでに、SiCフォトニック結晶およびそこに導入された人為欠陥による光導波路、高Q値ナノ共振器(Q値最大1万4千程度)を実現し、二光子吸収が完全に抑制されるためSiの100倍以上のエネルギー密度の光を取り扱えること、可視域まで透明であることを利用して同一基板上で550~1450nmにわたる超高帯域で多波長分波動作する波長選択デバイスを実現できることなどを示してきた。また、SiCフォトニック結晶デバイスは温度に対する波長の変化がSiの1/3程度と小さく、温度安定性に優れていることなども実証している。 本年度はこれまでに実現してきたSiCフォトニック結晶共振器における光非線形現象の検討を行った。基本モードの共鳴波長が1560nm、Q値1万程度のフォトニック結晶ナノ共振器を用い、このモードにCW可変波長レーザを導入することで、780nmの2次高調波の発生を確認した。SiCフォトニック結晶では、二光子吸収が存在せず、かつ発生した二次高調波もSiCの透明帯域にあるため、高効率かつ微小な高調波発生源として期待できる。また、フォトニック結晶ナノ共振器の高次モードも利用して、基本モードと高次モードのそれぞれにCW可変波長レーザ光を導入することで、和周波混合に基づく高調波の発生も観測することに成功した。また高調波光の偏光や放射パターンは理論解析結果と非常に良い一致を示した。 以上、本研究では平成23年度から4年間の研究により、SiCを用いたフォトニック結晶を実現し、Siフォトニック結晶では不可能な様々な領域へ応用を拡張することが可能であることを示すことに成功した。
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