研究課題/領域番号 |
23360035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中田 芳樹 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 准教授 (70291523)
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研究分担者 |
坪井 泰之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283698)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 表面増強ラマン(SERS) / フェムト秒レーザー / 応用光学・量子光工学 / 干渉 / ナノ材料 / 金属 / 周期構造 |
研究概要 |
①大面積SERS活性サイトの作製:グラディエントフィルター(特注)を導入し、ビーム形状のトップフラット化及び加工形状の均一化を行った。さらに3次元ターゲット高速駆動装置を導入し、マルチショット加工による大面積加工が可能となった。シングルショット当たりの加工面積は約6700μm2であり、1kHzでは6.7mm2/sに相当する。実際に金薄膜を加工する事により、10mm四方に渡る金ナノドロップ周期構造を作製した。 ②ピリジン(Pyridine)水溶液試料を用いたSERS測定:金ナノドロップ基板を用い、ピリジン水溶液のSERSシグナルを測定することでSERS活性能を調べた。その結果、SERSシグナルは通常のRaman散乱シグナルと比べおよそ60倍に増加していた。また、987, 1027 cm-1のラマンバンドは、SERS測定では 1007, 1029 cm-1にそれぞれシフトした。これらはSERS特有の結果であり、今回の結果から使用した基板にはSERS活性能があると結論付けられた。 ③SERS活性サイトのCADモデル作成:SERS活性はナノウィスカーの方が高い可能性が有り、今後はナノウィスカー構造を用いたSERS測定を視野に入れている。準備として周期ナノウィスカー構造のCADモデルを作製した。 ④透過型電子顕微鏡(TEM)によるナノウィスカー構造測定:CADモデルの精度向上のために、TEMを用いた金ナノウィスカーの構造解析を行った。フラットな中空バンプの中心に金ナノウィスカーが直立した構造が明らかになり、また頂点の曲率半径が4nmで有ることがわかり、金の多結晶構造及び双晶が発見された。 ⑤第2高調波(SHG)干渉加工装置の開発:BBO非線形光学結晶による波長変換を組み合わせた干渉加工装置を構成した。その結果、レーザーの吸収効率が4から7倍に向上した(Au膜厚14nm,28nmの場合)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の研究実績の概要に関し、①から③の項目で当初計画を達成している。さらに加えて④ナノウィスカーのTEM測定を行った。従来はSEM画像における外観を元にCADモデルを作成していたが、今回はTEMによる高解像度測定と量子ビーム加工を組み合わせることで断面像を観察し、正確なCADモデルの作成が可能となった。また⑤SHG干渉加工装置を構成し、レーザーの吸収効率が4から7倍に向上した(Au膜厚14nm,28nmの場合)。これはSHG変換効率を考慮してもエネルギー利用効率の向上に繋がり、基本波の場合と比較して5倍前後の高速加工が期待出来る。 一方、科研費新学術領域「電磁メタマテリアル」における公募研究「超短パルス光干渉加工法を用いた新しいメタマテリアルの開発」の結果において、位相などの干渉条件を変えることで干渉パターンをデザイン出来る事が分かった。干渉パターンの一部はSERS基板の作製に利用出来る可能性があり、今後調査する。 以上より、当初計画計画を超える成果を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
①アポダイザー及びSLMを利用したビームのトップハット化装置について、ビームプロファイラによるビーム形状評価とSLMによるフィードバックを併用し、より高度な調整を進める。これに完成済みの3次元高速駆動装置を組み合わせることで、面積が10平方ミリメートルの大面積SERS活性基板を作製する。 ②SERS活性サイトの作製と比較:SERS活性サイトの単位ナノ形状はナノドロップやナノウィスカーなどが考えられる。これらが百万個以上、10平方ミリメートルに渡りマトリクス配置した基板を作成し、昨年と同様にSERS活性能を測定し比較する。試料はピリジン(Pyridine)を用い、濃度や測定時間を変えながらSERS信号を測定することでSERS活性能を測定し、ナノ形状との関係を調べる。 ③干渉理論解析結果のSERS基板作製応用へ向けたサーベイ:干渉条件変更によって干渉パターンが変化する。この中から、SERS基板として有用な干渉パターンを選別し、作製が可能な干渉条件である場合は実際にSERS基板を作製する。 ③ナノ構造のCADモデル化:ナノウィスカー、ナノドロップ周期構造のCACモデル化を行う。ナノウィスカーの場合はTEM測定結果を活用する。これらによりFDTD解析の結果を得る。
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