研究課題/領域番号 |
23360036
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
神成 文彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40204804)
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研究分担者 |
田邊 孝純 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (40393805)
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キーワード | 局在プラズモン / フェムト秒レーザー / 近接場顕微鏡 / 暗視野顕微鏡 / ポラリトン / 時空間制御 |
研究概要 |
周波数干渉法と走査型近接場光学顕微鏡(NSOM)を組み合わせた測定系(SI-NSOM)、およびフリンジ分解相互相関計測と暗視野顕微鏡を組み合わせた測定系の2つの新たな手法により、金属ナノ構造におけるフェムト秒レーザ励起局在プラズモンの時空間特性を測定した。この測定法によって、局在プラズモンの時空間特性を測定できるだけではなく、励起レーザの帯域で制限されたプラズモン応答複素関数自体を求めることができた。 (1)相互相関暗視野顕微鏡によるフェムト秒レーザ励起プラズモン時間特性計測 超広帯域フェムト秒レーザ(Δλ=700-1100nm)を励起光源とし、石英基板上に作製した金ナノ構造の散乱場を対物レンズ(×10、NA=0.25)を用いてCCD上にイメージングした。参照光は遅延時間を調整して直接CCDに入射させることで電界相互相関イメージを計測した。それぞれの測定点におけるフリンジ分解相互相関波形を計測し,それらの波形をフーリエ変換し、参照パルスでdeconvolutionすることでプラズモン応答関数を求めることができた (2)SI-NSOMによるフェムト秒レーザ励起プラズモン時間特性計測とプラズモン波形整形 ファイバプローブには、開口径160nm、A1遮光コートのファイバプローブを用いてコレクションモードにより近接場光を取得した。(1)同様に,一方のパルスは励起光として金ナノ構造に基板の裏から全反射照射して局在プラズモンを発生させファイバプローブによって検出する。もう一方のパルスは参照光として遅延時間をつけた後、ファイバプローブと同一長のファイバを伝搬させる。冷却CCDカメラによって周波数干渉を測定した。暗視野顕微鏡を用いた相互相関計測と同様に、参照パルスが既知であればプラズモン応答関数が導出可能となる。さらに、波形整形器で適当な周波数位相変調を与えプラズモン場の時間特性を整形し、プラズモン応答関数から予測される波形と比較を行いと実測値のよい一致が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度で計画した,周波数干渉型近接場顕微計測,相互相関型暗視野顕微計測の両方の計測法を構築し,フェムト秒励起プラズモン応答関数を実測することに成功し,さらにフェムト秒レーザパルスの波形整形によってプラズモンスペクトル,波形を時空間制御する方式の実証もできた。さらに,表面プラズモン-ポラリトンへの展開のためのプラズモン導波路作成も済ませ,FDTDモデルによる解析も終了した。
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今後の研究の推進方策 |
第1に,表面プラズモン-ポラリトン伝播の応答関数を同様の手法で計測する手法を構築する。ポイントは,プラズモン導波路への結合手法とそのモニタリングである。ダブルプローブ型近接場顕微鏡の実現性も並行して検討していく。この表面プラズモン-ポラリトン伝播制御の出口は,入射パルス波形をエンコードすることでスイッチングできるプラズモン導波路の実現である。原理はFDTDモデルで実証済みであるが,プラズモン導波路の作製精度が鍵になる可能性がある。 第2に,制御された局在プラズモン場の応用としてナノ空間で選択的な2光子励起を実現出来る場を構築する。2光子励起はプラズモン場の2倍高調波場に対応することから,まずは2倍高調波スペクトルの制御実験を行う。
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