研究課題
本研究は、X線領域での原子の非線形光学過程を理論的・実験的に理解し、これを応用してX線自由電子レーザーのパルス幅を測定することを目標としている。既にX線自由電子レーザー、SACLA、のパルス幅を2.5 fsと見積もることに成功したので、最終年度である平成25年度は、より短いパルス幅にも対応できるよう2光子吸収の観測を試みた。その結果、5.6 keVのX線で束縛エネルギーが11.1 keVのゲルマニウムのK殻を励起する、X線2光子吸収に世界で初めて成功した。前年度に観測に成功した内殻2重イオン化は、フェムト秒領域での高効率な自己相関器として使える。一方で、今年度観測に成功した2光子吸収を使えば、アト秒領域までカバーできる超高時間分解能の自己相関器を構築できる。内殻2重イオン化では効率が高いが、バックグラウンドも高く測定が難しい。2光子吸収は効率が悪いが、信号のバックグラウンドが非常に低く測りやすい。このため総合的に判断すると、2光子吸収の方が自己相関器として利用しやすいことが分かった。また、我々の測定した2光子吸収の強度依存性から、並行して起こる1光子吸収過程や逐次的な多光子吸収過程と競合することを見出した。これらの競合過程を、レート方程式を使ってシミュレーションすることで、2光子吸収の強度依存性を上手く再現することが出来た。その結果、X線の強度が強い領域では競合過程によりイオン化が進み、K殻の束縛エネルギーが大きくなるため、2光子吸収が抑制されることが明らかになった。さらに、このシミュレーションから2光子吸収の散乱断面積を見積もることに成功した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Photon.
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