熱による気柱の不安定振動である熱音響自励振動を促進することができれば,可動部品のない熱機関「音波エンジン」の性能向上に貢献できる.またその抑制方法が開発できればガスタービンエンジン等の燃焼器で発生する迷惑な不安定振動を除去し安全性向上に貢献できる.現在は線形現象の立場から解析が試みられることがもっぱらだが,どちらの立場においても有限振幅のもとで生じる非線形ダイナミクスの理解が前提であると考えた.とくに注目したのは,振動子の結合による振動抑制効果とカオス振動子を結合させたときに生じるカオス同期である. 同等な二つの熱音響自励振動子を,バルブで結合した場合には振動子の振動数差が大きい場合に振動停止に至ることを明らかにしたが,振動数差がゼロの場合には同相同期に至り,振動は停止しない.振動停止を引き起こす基本的メカニズムがバルブを流れる振動流体が引き起こすエネルギー散逸にあることを明らかにし,その流量を増やすためにバルブに加えて半波長程度の長さのチューブでも結合した.その結果,振動数差がゼロの場合にも振動抑制が可能なことがわかった. 電気回路やレーザーなどの物理系では,カオス同期が観測されているが,流体系でのカオス同期はこれまで観測されていない.今年度は共鳴管形状を系統的に変化させることで,熱音響自励振動カオスが発生する条件を明らかにし,さらに二つの振動子の結合させた.ニードルバルブで結合して適当なバルブ開度に保ったところ,カオス的な振動を保ったまま同期に至ることがわかった.このようなカオス同期を実現するには気柱管を互いにどの場所で結合させるかという空間的自由度も重要であることを明らかにしている.
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