これまで,電界紡糸法を用いて酸化チタン(TiO2)およびそれにニオブをドープした透明導電体であるTNOの直径数十nmのナノファイバ(NFs)不織布と,その表面をレーザー蒸着法でコーティングした不織布を色素増感太陽電池(DSSC)のTiO2多孔体層に用いることによって,電荷移動特性と発電効率が改善されることを示した.4年目にあたるH26年度は,さらに電界紡糸NFs不織布を基材としたフレキシブルなDSSC及び光蓄電池(PRB)の実現をめざし,残る課題の克服のためにいくつかのアプローチを行った. ① 回転カソードを用いてTNO-NFs不織布中のナノファイバの配向度を向上させることでDSSCの短絡電流密度がさらに向上することを見いだした. ② 不織布中のナノファイバの機械的強度と電気伝導度を向上させるために,s電子が伝導に寄与している透明導電体であるITOとZnOのNFsからなる不織布を作製した.それらにTiO2ナノ粒子を挿入したDSSCにおいて,不織布が直列抵抗の小さな集電極として機能し,フレキシブルDSSCの基材として有望であることを示した.しかし,逆にNFs表面からの漏れ電流が大きく表面改質の必要があることが分かった. ③ 電界紡糸法に電界スプレー法を併用してTiO2ナノ粒子を酸化タングステン(WO3)NFs不織布中に担持させる方法でTiO2-WO3交互積層型のPRB電極を作製し,WO3-NFsの体積比を増加させることで飛躍的に光り蓄電量を増加させることが出来ることを示した.ただし,WO3-NFs不織布の機械強度が十分でないことが克服すべき課題である. ④ WO3-NFs自体の機械強度と電気伝導性が低いことを克服するため,それ自体で蓄電機能を有する導電性高分子ポリピロールのNFs不織布を電界紡糸法で作製し,光蓄電性を有することを示した.
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