研究課題/領域番号 |
23360044
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山田 家和勝 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究部門付 (70358258)
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研究分担者 |
豊川 弘之 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究グループ長 (80357582)
黒田 隆之助 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (70350428)
福山 直人 東海大学, 医学部, 准教授 (50349338)
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キーワード | 非・低侵襲計測・治療 / 光源技術 / 高性能レーザー / 量子ビーム / 放射線 |
研究概要 |
本研究は、小型電子加速器と高出力レーザーを駆使したレーザーコンプトン準単色硬X線(LCS-X線)の高収量発生技術とその医用イメージングへの適用手法の研究を目的とする。 本年度はLCS-X線のマルチパルス化(マルチパルスLCS法)によりX線を高収量化するため、コンプトン散乱用高出力レーザーパルス列を発生させる再生増幅型レーザー共振器技術を構築した。そこでは共振器へ供給するシードレーザー及び再生増幅システムの最適構成を決定し、再生増幅器内で数mJ程度のレーザー蓄積に成功した。その際、オフナー型パルスストレッチャーで、種光パルス幅をfsから10psまで制御できることを確認するとともに、プリアンプを4パスから6パス増幅に変更することで、種光パルスを10^4倍以上増強することに成功した。再生増幅器の共振器長を3.8mにした場合のビルドアップ増幅実験において、種光パルス1本の導入では約20ns間隔の歯抜け増幅となるが、強度変調した2本の種光パルス導入では、強度変動の少ない約10ns間隔のレーザー蓄積が実現できることが確認できた。コンプトン衝突させる電子ピームは約10ns間隔であるため、高効率のマルチパルスLCSが可能となる。再生増幅型レーザー共振器内はペリスコープ型拡大縮小光学系となっており、集光点前後の2枚の凹面鏡曲率半径は3倍異なる。これに因る往路衝突と復路衝突におけるLCS-X線の分布の相違を検証するため、計算機3次元シミュレーションを実施し、生成X線の分布にはほとんど差がないことを確認した。このようなLCS-X線光源開発と並行して、放射光や病院設置型X線源を用いた微小血管造影のための実験が、他機関の分担研究者によって進められた。 次年度以降は、共振器内のレーザー蓄積エネルギーを数Jまで増強し、LCS-X線マルチパルスを生成するとともに、これを光源とする微小血管造影やタルポ干渉による高精細医用イメージング実現のための研究を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再生増幅型レーザー共振器内のレーザー蓄積エネルギーはまだ数mJと目標値まで到達していないが、手法は確立できており、小型電子加速器で発生させたマルチバンチ電子ビームとの衝突も可能な技術レベルに達している。全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当面の課題は、再生増幅型レーザー共振器内のレーザー蓄積エネルギーの増強であるが、励起エネルギーを増強していく過程で、共振器の光学系を含め、偏光ビームスプリッタやミラーがダメージ閾値を超えてしまう恐れがあるため、ビーム径の最適化は必須である。次年度は、約5Jの蓄積エネルギーを目指すとともに、共振器の電子加速器ビームラインへのインストールを行い、マルチバンチ電子ビームとの衝突によりLCS-X線をより高収量で生成する。同時に、最終年度に向け、タルボ干渉計や高精細医用イメージングの準備を進めていく。
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