研究課題/領域番号 |
23360045
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
冨澤 宏光 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 副主幹研究員 (40344395)
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研究分担者 |
鈴木 伸介 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 主幹研究員 (00416380)
南出 泰亜 独立行政法人理化学研究所, テラヘルツ光源開発チーム, 研究員(チームリーダー) (10322687)
出羽 英紀 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (20360836)
谷内 努 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (60360822)
富樫 格 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 研究員 (60415239)
岡安 雄一 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 研究員 (90509910)
松原 伸一 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 研究員 (90532135)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | EOサンプリング / フェムト秒電子バンチ計測 / 非破壊計測 / 電気光学効果 / フェムト秒レーザー / スーパーコンティニュウム / 3次元電子バンチ形状モニター / 光タイミングシステム |
研究概要 |
平成24年度は、SPring-8内の2つの先端加速器であるVUV FEL試験加速器とRF電子銃試験施設において、EOサンプリングを完全に常時モニターとして利用できる状態になった。平成24年12月からは、RF電子銃試験施設は極短バンチ電子ビーム生成のための大改造に入り、3次元EOサンプリングの高時間分解能計測が可能な施設になる。平成25年度中に完成する予定で、ここで試験するためのモニターシステムの開発を今年度は進めた。一方のVUV FEL試験加速器では、DAST結晶による長期安定度に関する基礎データが蓄積された。EOサンプリングがシードVUV FELの標準モニターとして採用され、それによる時間ドリフト制御に成功、有効ヒット率において二桁、パルスエネルギーにおいて一桁の改善がなされた。これにより、シードFELのユーザ利用実験が初めて可能になり、ここで開発したEOサンプリング・システムの有用性が確認された(この成果により第7回近藤賞を受賞)。 プローブレーザ光源の開発では、コンパクトな固体レーザベースでの開発案を採用し、フォトニック結晶LMAファイバーを用いたスペクトル帯域幅300 nm [FWHM]の発生が長期に安定的に実現できるレベルに達した。また、その矩形パルス化を保持するためのチャープスキャン計測によるフィードバックにも成功している。特筆すべきことは、有機EO結晶(DAST結晶)でのEOサンプリングの長寿命化に成功したことである。この結晶と新たなゲートI.I.カメラによるデコーディングシステムの組み合わせにより、3次元EOサンプリングでのS/Nの改善が大幅になされる技術が揃った。 昨年に引き続き、別のプローブレーザー方式である、円錐屈折による円環ビーム発生をバルセロナ大学と共同で研究開発を行なった。この物理的な性質を詳細に調べ、その結果はジャーナル論文で掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に世界初の有機EO結晶であるDAST結晶を用いてのEOサンプリングに成功したのにとどまらず、平成24年度はそれを長期に使用できるレベルまで完成するに至った。超高速時間分解能用のプローブ用レーザパルス光源の長期安定発振、完全矩形化整形にも成功した。具体的には、既に開発した3次元EOS化のための各種光学素子を組み合わせ、光学系全体の分散の非線形性についてはAO変調器とグリズムペアで補償することでフーリエ限界パルスをまず実現し、それをゼロ点としてAO変調器でGDDを加えていくことで、30 fs [FWHM]の時間分解能のEOサンプリングに最適な線形チャープ・プローブパルスを用意した。有機結晶での最高時間分解能を確認するためには、平成25年度のRF電子銃試験施設の改造を待たなければならないが、科研費で進めている内容に関しては、1年前倒しで進行している状態である。また、SPring-8内の2つの先端加速器でのEOサンプリングによる短バンチ計測には成功し、常時モニターとしてユーザ運転中にも利用できている。本年度は、これを利用してのシードFELの長期安定化に成功し、世界のシードFEL装置が実現しているスペックを大きく上回るヒット率を達成した。 以上の成功によって半年ほど計画を前倒しにして計画を進行している状態にあるため、評価区分を(1)とした。
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今後の研究の推進方策 |
放射線下での耐久性に優れた材料をさらに追及するため、DAST以外での有機EO結晶でのEOサンプリングの開発も推進する。2013年度に完成予定であるアップグレードRF電子銃試験施設による極短バンチ電子ビームにより、有機EO結晶の高速応答性を原理実証する。既に完成している超高速時間分解能用のプローブ光パルスにより、予想されているDAST結晶での最高時間分解能を実現することが最終目標である。 これと並行して、新たなプローブレーザー方式である、円錐屈折による円環ビーム発生におけるエンコード/デコード方式を検討し、今まで開発しているポッケルス効果によるEOサンプリングだけでなく、アモルファスを用いたEO媒質によるカー効果を利用したプローブ光源としての可能性も、3次元バンチ計測に有用と思われるので引き続き研究開発を推進する。
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