研究課題/領域番号 |
23360049
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
工学基礎
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 明 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (50211941)
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研究分担者 |
青島 政之 公立大学法人秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (20315625)
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キーワード | 粒子サスペンション / レオロジー / 逆磁気粘性効果 / 分子シミュレーション / ブラウン動力学法 / ブラウン運動 |
研究概要 |
平成23年度の本研究の主たる目的は、逆磁気粘性効果の磁場の強さ、および、ずり速度への依存性を理論的に詳細に解明するとともに、24年度で予定している実験装置システムの構築を効率的に行えるような基礎データを取得することにある。このような目的を達成するために、新たにスピン回転ブラウン運動を考慮した粒子の配向分布関数の基礎方程式を構築するとともに、その基礎方程式を数値解析法で解くことで、スピン回転ブラウン運動が逆磁気粘性効果に及ぼす影響を理論的に詳細に解明した。主な結果の数例を示すと次のようになる。スピン回転ブラウン運動は粒子の配向分布関数には大きな影響を及ぼさないが、負の粘度の効果をかなり減少される影響を及ぼす。ただし、負の粘度の磁場への依存性は定性的に非常によく一致する。スピン回転ブラウン運動の影響は、磁気モーメントの方向と直接関係する磁化の強さに非常に敏感に現れる。次にこの理論的な結果を踏まえ、ブラウン動力学シミュレーションのための計算プログラムの開発を行った。開発を進めるに伴い、ヘマタイト粒子分散系特有の困難な問題が生じることが明らかとなり、ブラウン動力学法の適用に際しての種々の問題点の解明の研究を行った。得られた結果の数例を示すと次のようになる。理論的な逆磁気粘性効果の特徴は、本シミュレーションの結果でも定性的に非常によく再現する。ただし、定量的な一致は磁場の強さが比較的小さな領域を除いてあまりよくない。シミュレーションにおいては、磁場の弱い領域ではスピン回転ブラウン運動を考慮した方法を用い、磁場の強い領域ではスピン回転運動は考慮するがスピン回転ブラウン運動を考慮しない方法を用いることで、理論解とよく一致することを明らかにした。現在、粒子間相互作用を考慮したブラウン動力学シミュレーションを実行している段階であり、ほぼ初期の目的は達成していると言うことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブラウン動力学シミュレーションのプログラムを構築する段階で、ヘマタイト粒子分散系特有の問題が生じることが明らかとなったが、その原因ならびに解決法を詳細に解明した。さらには、新たにスピン回転ブラウン運動を考慮した理論構築を行い、逆磁気粘性効果への影響を詳細に明らかにした。以上より、平成24年度の実験装置システムの構築を効率的に行うことを可能にする基礎データを十分取得することに成功している。ゆえに、おおむね順調に研究は進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
理論的な研究結果を踏まえ、磁場の環境下で粘度を高精度で測定可能な実験装置システムの構築を目指す。もし負の粘度が測定困難な場合には、ヘマタイト粒子を分散させる母液を工夫することで、効果を増幅させる形で負の粘度が測定できるような対策を講ずる予定である。また、測定値が磁場の影響を受けるようならば、回転軸を伸張するような工夫を施して、磁場の影響を除くよう実験装置の改良を試みる予定である。以上のように、実験装置の構築とともに予備実験を繰り返しながら、逆磁気粘性効果を捕獲できるような装置となるよう改善を試み、実験装置システムの完成を目指す。25年度で、このレオロジー測定装置システムを用いて広範な測定を行い、理論で予測された逆磁気粘性効果の実験的な検証を行い、そのメカニズムを明確にすることになる。
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