研究概要 |
微小部品をターゲットとした,プラスチックと金属の異材レーザスポット接合法の開発を目的とする.とくに,接合部寸法の制約から要求される,本質的な接合強度向上のため,以下3点について検討する.(1)各種負荷条件下での接合体強度特性に及ぼす溶込部形状の影響を明らかにし,最適な形状を見出すとともに,それを実現するプロセス技術を開発する。(2)気泡の発生メカニズムを解明し,気泡の発生・撹拌挙動を制御する手法を開発する.(3)微視的なアンカー効果および気泡の発生・撹拌挙動に及ぼす超音波振動の影響を明らかにし,適切なプロセス条件を見出す.最終的には,これらの結果をまとめ,力学的およびプロセス的に最適化した,新しい異材接合法を提案する.平成23年度は,主に,接合実験によりプラスチック/金属異材レーザスポット接合体を作製し,引張りせん断やピール荷重下における強度特性および接合部の状態を調べた.プラスチック材料はPET,金属材料はアルミニウム合金を主として用いた.入熱量の増加とともに,接合面積や接合体の破断荷重が増加した.また,入熱量が著しく大きい場合を除き,全体としては,接合部に形成される溶込部深さの増加にともない,接合強度が増加する傾向が認められた.接合部にばねを導入した接合体解析モデルを作成し,FEM解析を行い,接合体の強度と溶込部形状の関係について考察した.解析の結果,溶込深さの増加にともない,接合強度が増加する傾向が認められた.他方,実際の接合体では,界面近傍のプラスチック側に気泡が生成し,この気泡が接合体の強度特性に影響を及ぼしている.気泡の数や寸法は,入熱量の増加にともない増加していた.すなわち,入熱量の変化により,溶込深さと気泡の発生挙動が同時に変化するため,強度特性向上のためには,これらを最適化するプロセス条件を見出す必要があることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた項目についてそれぞれ検討を進めることができたが,接合実験においては,より詳細に接合部形状の影響について考察するため,当初予定よりもプラスチック材料の種類を絞って実験を行った.他方,解析では,溶込部形状の影響を表現するモデルを構築することができた.この結果は,来年度以降の研究の進展に貢献することが大きい.以上より,全体としては,おおむね順調,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
解析モデルの方向性が見えてきたことで,シミュレーションを援用した接合条件の最適化に向けて,検討を進めることができる.問題点としては,気泡の影響をどのようにモデルに採り入れるかという点があるが,研究協力者の協力により解決する,また,気泡の生成状態を制御する装置についても,実際の接合実験に適用する場合,動作や制御の困難さが想定されるが,この点についても,研究協力者の協力により解決する.
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