研究課題/領域番号 |
23360052
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
宮下 幸雄 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (00303181)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 異材接合 / レーザー / スポット接合 / プラスチック / 金属 / 界面 / 接合強度 / シミュレーション |
研究概要 |
微小部品をターゲットとした,プラスチックと金属の異材レーザスポット接合法の開発を目的とする.とくに,接合部寸法の制約から要求される,本質的な接合強度向上のため, 以下3点について検討する.(1)各種負荷条件下での接合体強度特性に及ぼす溶込部形状の影響を明らかにし,最適な形状を見出すとともに,それを実現するプロセス技術を開発する.(2)気泡の発生メカニズムを解明し,気泡の発生・撹拌挙動を制御する手法を開発する.(3)微視的なアンカー効果および気泡の発生・撹拌挙動に及ぼす加圧力・加振力の影響を明らかにし,適切なプロセス条件を見出す.最終的には,これらの結果をまとめ,力学的およびプロセス的に最適化した,新しい異材接合法を提案する.平成24年度は,主に,接合実験によりプラスチック/金属異材レーザスポット接合体を作製し,接合部の状態および異なる負荷荷重下における接合強度を調べ,FEM解析とあわせて,接合体の強度特性について検討した.また,プラスチック材料はPETやPC,金属材料はアルミニウム合金やステンレス鋼を用い,材料組合せの影響についても検討した.接合体の強度特性は,負荷荷重条件によって変化し,適切な接合部の状態も異なることが実験および解析により明らかとなった.材料組合せについて,適切な溶接条件は,金属およびプラスチック両材料によって異なり,また,その強度特性もレーザ照射方法により異なっていた.すなわち,材料組合せおよび負荷形式によって,適切な接合条件が異なり,その予測には,シミュレーションが有効であることがわかった.さらに,接合部のプラスチック側界面近傍に生じる気泡の制御を目的とし,圧電素子を用いた押付力負荷装置を試作した.接合実験の結果,荷重負荷により気泡の生成状態を制御できることがわかった.すなわち,接合体の強度特性をコントロールできる可能性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた項目についてそれぞれ検討を進めることができた.接合実験では,材料組合せの異なる場合についても接合実験を行い,接合条件を明らかにすることができた.しかし,接合状態があまり良好ではなかった材料組合せについては,適切な手法を見出して接合を実現するまでには至らなかった.レーザ照射条件に関して,当初予定では,場合によってはレーザ加工ヘッドの改良といった大掛かりな検討内容も想定していたが,レーザの出力形式やパルス条件,デフォーカスなどについて検討し,接合条件を見出すことができた。接合体の強度特性については,負荷形式による接合体の強度特性の違いと適切な溶込部形状を提案することができ,継手の実用・設計上、きわめて有効な知見を得ることができた.押付力および振動を接合部に与えることのできる装置を試作し,気泡の生成状態について調べ,その影響を明らかにした.すなわち,気泡の生成状態を制御することにより,継手強度をコントロールできるという重要な知見を得ることができた.一方で,様々な材料組合せや接合条件に対する適切な押付力や加振の条件をさらに明確にするためには,継続して実験を行い,データを蓄積・整理する必要がると考えている.シミュレーションについて,上述のように,継手強度に関しては,重要な知見が得られ,かつ,その有用性を示すことができた.他方で,より実用性の高い技術とするためには,接合プロセス(レーザ照射条件の違いの影響など)も含めたシミュレーション手法を開発し,適切な接合条件を推測できるように展開していく必要がある.これら本年度の研究成果は,国際会議を含む7件の学会発表,1件の論文,1件の著書として公表することができた.以上の結果より,当初予定および来年度以降の研究の進展を考えた場合に,全体としてはおおむね順調,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
異材接合継手の強度特性に及ぼす力学的な要因に関しては,これまでに得られた実験および解析結果から,継手の実用・設計上,有用なシミュレーション手法を示すことができた.今後,さらに,その精度を高めるためには,より細かい条件,たとえば,金属表面の状態,プラスチックの機械的性質の変化,気泡の大きさ,形状,分布状態などをモデルに組込む必要がある.また,より実用性を向上させるために,接合プロセスと構造解析を連成させたシミュレーションへと発展させていく予定である.これにより,実構造物での接合部の強度特性と,適切な接合条件をシミュレーションで求めることができる.これらついては,これまでと同様,解析・シミュレーションに関して幅広い経験を有し,とくに,異材接合体界面の力学的な問題を多く取り扱ってきている研究協力者の協力により進める.押付力および加振力を加える治具を試作し,気泡の生成状態に対するその効果を確認することができたが,より詳細に,その影響を調べ,適切な条件を見出す必要がある.その際には,観察および解析に関して,困難をともなうことが予想されるが,超音波加工などの特殊加工中の加工プロセスを観察,解析した豊富な経験を有する研究協力者の協力を得ることで解決する.また,それらをもとにして,様々な条件で接合実験を行い,接合手法を確立する.以上の取組みをまとめ,最終年度となる平成25年度の終わりには,力学とプロセスの影響を考慮した新しい異材接合手法を開発できると考えている.
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