研究課題/領域番号 |
23360053
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
東郷 敬一郎 静岡大学, 工学部, 教授 (10155492)
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研究分担者 |
藤井 朋之 静岡大学, 工学部, 助教 (30377840)
島村 佳伸 静岡大学, 工学部, 准教授 (80272673)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 構造・機能材料 / シミュレーション工学 / 複合材料・物性 / 生体適合傾斜機能材料 |
研究概要 |
1 焼結材の組織解明と酸素拡散の評価 100%Ti、100%PSZおよびPSZ-Ti系複合材料を放電プラズマ焼結法により作製する場合の焼結条件を明らかにし、焼結組織の走査型電子顕微鏡観察、X線回折法による生成物分析、エネルギー分散X線分光法による元素面分析により、PSZ相からTi相への酸素拡散により酸化Tiが形成されることを明らかにした。また、Ti-PSZ-Tiの3層材料の分析より、酸化Ti相の厚さは放電プラズマ焼結における電流の方向に依存する可能性も示した。 2 力学特性評価モデルの構築 PSZとTiさらにPSZ-Ti界面相を有する3相複合材料のモデルを想定して、二重介在物法に基づき力学モデルを開発した。Ti無限体中に球状のPSZ粒子を界面相で取り囲んだ2相粒子が1個存在する場合の内部応力の解析を有限要素法により行い、粒子、界面相および2相粒子の平均応力を二重介在物法による予測と比較した結果、各相の応力は一致しないものの2相粒子の平均応力は一致することを明らかにした。このことより、二重介在物法は、微視的応力は予測できないものの複合材料の巨視的特性は予測できることがわかる。また、焼結過程および酸素拡散のシミュレーションモデルの高精度化を行った。これにより、粉末粒子の寸法、組成、焼結条件を入力データとして、焼結状態(密度)および酸素の拡散距離を予測できる焼結過程のマルチフィジックス・シミュレーション、および焼結された複合材料の機械的特性を予測できる力学モデルの骨格が構築された。 3 全組成範囲にわたる複合材料の作製と特性評価 PSZとTiの割合を100%PSZから100%Tiまでの全範囲にわたって変えた複合材料を作製し、ヤング率、曲げ強度、破壊靭性を求めた。その結果、Ti体積率の増加とともに曲げ強度、破壊靭性が低下し、酸化Ti形成の影響が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放電プラズマ焼結による金属(Ti)、セラミックス(PSZ)、PSZ-Ti複合材料の最適な焼結条件を求め、焼結材料の組織、酸素拡散、酸化Ti形成を明らかにすることができ、また、100%PSZから100%PSZに渡る複合材料を作製し機械的特性を評価できた。一方、焼結過程のマルチフィジックス・シミュレーションにおいては、塑性変形と酸素拡散を考慮した解析を行い、さらに物質表面拡散による焼結過程の導入について検討しその見通しを付けることができ、焼結複合材料の力学特性解析のための力学モデルにおいては、二重介在物法の可能性と限界を明らかにすることができた。以上のことより、研究は計画に沿っておおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は放電プラズマ焼結により、PSZ-Ti複合材料における酸化Tiの形成を抑制することを目論んで進めてきたが、これまでの結果より、放電プラズマ焼結を用いても酸化Tiを抑制することはかなり難しいことがわかりつつある。傾斜機能材料を作製するに当たり、傾斜組成を制御することにより酸化Tiによる脆化を克服する必要がある。100%Tiから100%PSZに渡る複合材料の機械的特性を明らかにし、それに基づき最適な機械的特性となる傾斜機能材料の作製を目指したい。最終的に焼結材の評価、焼結過程のマルチフィジックス・シミュレーションの高精度化、PSZ粒子、酸化層、TiマトリックスからなるPSZ-Ti複合材料の弾塑性変形特性を予測するモデルの開発を通して、最終年度の放電プラズマ焼結の焼結過程の解明と傾斜機能材料設計・創生につなげたい。
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