研究課題/領域番号 |
23360060
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤井 透 同志社大学, 理工学部, 教授 (20156821)
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研究分担者 |
大窪 和也 同志社大学, 理工学部, 教授 (60319465)
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キーワード | セルロースナノ繊維 / 超長寿命 / CFRP / エポキシ / MFC / バクテリアセルロース / 高サイクル疲労試験機 / エタノール置換 |
研究概要 |
1.振動式高サイクル疲労試験機の開発とその有効性 CFRPの引張り疲労試験では、電気油圧サーボ試験機を用いた場合、試験機の能力(主に変位量)から荷重の繰り返し速度は精々10Hzまでである。そのため、1億回に達する超長サイクルの疲労試験では120日も必要になる。そこで、本研究では小型振動フィーダをベースに共振型の曲げ疲労試験機を開発した。試験片は両端を固定する。繰り返し速度は50Hz以上にできる。固定端の反モーメントで荷重を見積もる。共振型なので、CFRP試験片の内部損傷が進展とともに共振周波数が下がる。そこで、インバータで加振周波数を順次調整し、固定端反モーメント一定下の疲労試験を行うことができる。レーザ変位計で変位を計測する。数本のサンプルについて超長サイクル疲労試験を行ったところ、CFRPでは、1千万回以降も疲労強度は下がることが分かった。 2.エポキシ母材のセルロースナノファイバー変性法の違いとCFRPの疲労寿命 パルプより製造されたMFCは、親水性が高いため、これをエポキシ樹脂に混入する場合、MFCの水を予めエタノール置換し樹脂に分散させる。その後、真空乾燥して樹脂内のエタノールを蒸発させる(方法(1))。これらの手間を省くため、化学パルプを樹脂に入れ、これを2軸混練押出機/ニーダ等で混合することで樹脂内でMFCを形成・分散させる方法が開発された(方法(2))。この場合、樹脂に水が混入する恐れはなく、エタノール置換等のプロセスが不要となる。そこで、疲労寿命効果に対して両者に違いがないか調べた。その結果、未変性エポキシCFRPに比べ100万回を超える高サイクル寿命では、いずれのも寿命が10倍以上延びることが確認された。なお、疲労寿命を延ばせるMFCの最適含有率に違いのあることが分かった。BC(Bacteria Cellulose)変性したエポキシ樹脂(方法(3))を用いCFRPを製作、高サイクル疲労試験を行った。その結果、樹脂重量の0.3~0.5%BCを含有させるだけで高サイクル疲労寿命の顕著な向上が認められた。しかし、BCの結晶繊維のみを用いた場合と比較して、両者に大きな相違は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1億回の疲労試験を安定的に実施できる疲労試験機が開発できた。高温・多湿など、試験環境も変えられる。当初3台の予定であったが、最終的に6台製造し、実用的、安定的に疲労試験が実施できる環境が整った。また、MFCを母材に混入する方法として従来法とは異なる方法が実用化され、これが従来の手間のかかるエタノール置換と同等のCFRP疲労寿命延長効果のあることも示せた。これにより、MFCによるCFRPの超長寿命達成の実用化が可能となる基礎資料が得られた。その際、セルロースナノファイバーの形態について、針状でなくともスケルトン構造であっても寿命改善効果のあることが示せた。さらに、エレクトロスピニング法により製造したPVAナノ繊維を用い、ナノ繊維の剛性と疲労寿命との関係を調べ、ナノ繊維による疲労寿命向上メカニズムを解明するヒントを得た。次年度には同メカニズムを概ね解明できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの電気油圧サーボ試験機を用いた引張り-引張り疲労試験結果より、生物由来セルロースナノファイバー(BCNF)の少量添加で疲労寿命は顕著に延びることが明確となった。BCNFの僅かな添加によって界面強度が向上する。しかし、BCNFの添加量が少し多くなると疲労寿命の向上は顕著でなくなる。そのメカニズムについてはよくわかっていない。一方、BCNFと剛性が全く違う(バルク材ではエポキシ母材と同じ)PVAナノ繊維を0.1wt%以下、母材に混入してもBCNF以上の疲労寿命効果の顕著な向上が認められた。ここに、ナノ繊維混入によるCFRPの疲労特性向上メカニズムが存在しそうである。そこで、はじめにカーボン繊維1本を変性度の異なるエポキシ母材に埋没させ、(1)フラグメンテーション試験を行う。高精細・高速シャッターを有するマイクロスコープ(科研費で購入)でその場観察する。これにより、エポキシ樹脂/カーボン繊維界面強度に及ぼすBCNF変性の効果を定量化する。また、(2)モードI界面き裂進展に及ぼすBCNFによるエポキシ母材の変性の効果を明らかにする(分担者)。 これにより、 ○エポキシ母材へのBCNF少量添加による界面強度の向上メカニズム。 ○界面強度と疲労強度との関係を解明 する。より多くのサンプルを作るため、BCNFは強力なプロセスホモジナイザ(科研費で購入)を用いる。
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