研究課題/領域番号 |
23360064
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
夏 恒 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40345335)
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キーワード | 電解加工 / 電解液 / 濃度 / 超硬合金 / 微細軸 / 極間距離 / 検出精度 / 電極消耗 |
研究概要 |
超硬合金に代表される難削材の加工には、電解加工は得意であるが、環境対策や加工速度がネックとなっている。本研究は、極低濃度電解液を用いた微細電解加工法を提案し、難削材の微細形状を高精度、高速度で創成するとともに、環境に与えるものづくりの悪影響を最低限に抑える。目標を達成するため、極低濃度電解液による加工に適した電源システムと極問距離制御システムを構築し、等価回路モデルの分析に基づいた加工速度の向上策を検討する。今年度は、主に以下の研究項目を実施した。 (1)極低濃度電解液による超硬合金微細軸の製作 電解液にミネラルウォータを用いて、超硬合金微細軸の製作を行った結果、次のことを明らかにした。1)加工中に軸の回転、超音波洗浄を行うことで、極間生成物、軸に付着する生成物を抑制することができ、軸径が均一で偏心の小さい軸の形成が可能である。2)電解液温度は超音波洗浄、および電気伝導率に影響を与え、加工速度および加工形状に対しての最適温度が存在する。 (2)ピーク電流を用いた電解加工極間距離の検出精度と感度の調査 ピーク電流を用いた極間距離検出手法における検出精度の向上を目標とし、電解液濃度及び加工電圧に着目して、それらの因子が検出精度に与える影響を実験的に調査して、以下の知見を得た。1)電解液濃度は検出精度に影響し、実験条件により最適値がある。2)加工電圧の増大に従い不動態膜を破壊することができ、検出精度は向上する。 (3)ローレベル電圧の調整によるパルス電解加工の電極消耗の抑制 パルス電解加工において、ローレベ電圧を上昇させることにより工具消耗を抑制し、精度の良い加工を行える条件を調査した。またデューティ比とローレベル電圧が加工精度に及ぼす影響を調査した。その結果、ローレベル電圧を2.OVまで上昇させた場合に工具消耗が抑制されると同時に、加工精度が向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は以下の項目の実施を予定していたが、2)の加工状態検出は終わったが、制御にはまだ課題が残っている。その他は予定通り進展した。1)極低電解液による微細電解加工の可能性検討と特性の調査、2)極間電圧による加工状態の検出と制御、3)工具電極の運動制御及び電源装置の構築、4)極間距離と加工電流波形との関係の調査
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今後の研究の推進方策 |
極低濃度電解液による微細電解加工の可能性を検討し、極間距離の検出や電極消耗の抑制に成功したが、電解液濃度を低くすると、加工速度が遅くなり、また極間生成物の発生や不動態膜の生成により加工形状が悪化することが実験により判明した。そこで、工具電極に超音波振動の付与により極間生成物排出を促進し、また両極性電圧パルスにより不動態膜を抑制することにより、加工速度と加工精度の向上を図る。なお、加工現象の解明のため、実験により電解加工等価回路のパラメータを同定し、加工速度と加工精度に及ぼす加工条件の影響を明らかにする。
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