本研究では、サブ50nmの加工分解能で数cmサイズの3次元マイクロ・ナノ構造体を自在作製できる「新方式ラージスケール・3次元ナノ光造形モールディング技術」を開発し、さまざまなセラミックス材料からなるマイクロデバイスの創製を目指しました。本年度は、「光不活性化反応を利用したナノ光造形」のための光硬化性樹脂の最選定および造形条件最適化を行いました。また、硬化阻害用レーザー光の走査方法についても新たな走査方法を検討し、有効性を評価する実験を行いました。その結果、新たに選定した光硬化性樹脂は、従来の樹脂よりも硬化阻害を誘起するレーザー強度の許容範囲が広く、安定して硬化阻害を誘起できることがわかりました。また、従来法では、硬化阻害用レーザーを硬化用レーザーの焦点から一定距離引き離すだけの造形法でしたが、硬化阻害用レーザーを走査することで、より効果的かつ安定に硬化阻害を誘起できることが判明しました。その結果、最小線幅58nmの微細な造形を実現できました。 一方、光造形モールディングの応用研究の1つである圧電セラミックス(チタン酸バリウム)を用いた振動発電素子の開発に関しては、昨年度から開発中のスパイラル型振動発電素子の電極付与方法について詳細な解析を行いました。その結果、スパイラル振動発電素子の振動によって、素子の表面に生じる電荷分布が圧縮と引張りで反転することから、素子表面に一様な電極を付与すると電荷のキャンセルが生じて、発電効率が著しく低下していることがわかりました。そこで、生じる電荷分布に応じて、選択的な電極配置を付与することで発電効率を数十倍に向上できることがわかりました。今後は、見いだした選択的な電極配置を用いて、高効率なスパイラル型振動発電素子の開発を継続する予定です。
|