研究課題/領域番号 |
23360071
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
仙波 卓弥 福岡工業大学, 工学部, 教授 (30154678)
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研究分担者 |
藤山 博一 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (50148912)
天本 祥文 福岡工業大学, 工学部, 助教 (00505670)
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キーワード | ナノ多結晶ダイヤモンド / 焼結ダイヤモンド / 遷移金属 / 熱化学反応 / 電気陰性度 / 標準自由エネルギー |
研究概要 |
高純度グラファイトを超高圧・高温下でダイヤモンドに直接変換したナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)は,サイズが数十ナノメータのダイヤモンドで構成されており,単結晶ダイヤモンド(SCD)よりも硬いだけでなく壁開性を持っていない.このNPDを高硬度金型材料に対して超精密切削加工を行うことができる次世代の工具素材として使用するためには,欠けが無く鋭利な切れ刃を成形できるNPDに対する超精密仕上げ成形技術を新たに開発する必要がある. 本研究では,焼結ダイヤモンド(PCD)に介在するコバルトCoを各種の遷移金属で置換したPCD製円板を研削工具として使用し,NPDに対する乾式研削実験を行った.PCDの損耗量に対するNPDの除去体積(研削比)と各種遷移金属に関するd電子飽和度や酸化物の生成に関する標準自由エネルギーとの関連を明らかにするための研究を行った.すなわち,NPDと各種遷移金属との間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明するための実験を行った. その結果,NPDと遷移金属との間には 1)共有結合に関与している電子を遷移金属が奪い,結合強度が弱くなった炭素原子がNPDの表面から機械的なアブレーション作用によって除去される. 2)遷移金属の表面に生成された酸化物をNPDを構成する炭素が還元し炭素が燃焼するといった,酸化・還元反応が発生してNPDの表面から炭素原子が除去される. 3)NPDが遷移金属の酸化物と高温で接触するとNPDの表面に熱変質層が生成され,この熱変質層が機械的なアブレーションによって除去される. といった,最低でも3種類の熱化学反応が生じていることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究では,NPDとPCDとの間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明した後に,欠けのない鋭利な切れ刃を持つNPD製の切削工具を成形する予定である.平成23年度には熱化学反応のメカニズムを解明することに成功したが,欠けのない鋭利な切れ刃を持つNPD製の切削工具を成形することに関しては,平成24年度以降に継続して研究を進める必要が残されている.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に実施した研究の結果,NPDに関する研削加工面の粗さは,PCDに高周波スパッタした遷移金属の比熱容量が増すに従って減少することが明らかになった.なかでも,焼結助剤として用いられているコバルトCoをチタンTiで置換したPCDをツルーアに使用した場合には,粗さが1nmRz程度の研削加工面を作ることができた.平成24年度には,Coを炭化硼素B4C,窒化硼素BN,酸化アルミナAl203,酸化珪素SiC,ならびに窒化珪素Si3N4といった,比熱容量の高い安定窒化物や酸化物等で置換したPCDをツルーアに使用し,粗さが1nmRz以下の研削加工面を作ることができるツルーアの開発を実施する.ツルーアの開発に成功した後,欠けのない鋭利な切れ天を持つNPD製切削工具の成形に移行する.
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