研究概要 |
ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)は,単結晶ダイヤモンドよりも耐摩耗性や耐劈開性に優れており,高硬度金型材料に対して超精密切削加工を行うことができる,次世代の工具素材として使用される可能性が高い.この,NPD製の切削工具を成形するためにはNPDから切りくずが排出されるメカニズムを解明する必要があると考え,本研究ではNPD製ノーズRバイトとそれを成形するためのツルーアとして使用した焼結ダイヤモンド(PCD)製円板との間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明するための研究を実施した. 平成23年度と平成24年度には,砥石作用面を30 nm Rz前後の粗さに成形したPCD製円板に対して電解加工と高周波スパッタを行い,焼結助剤として使用されているコバルトCoを遷移金属や高比熱材料で置換したPCD製円板を試作した.また,レーザ成形したNPD製ノーズRバイトのすくい面に対して乾式研削を行った.その結果,NPDの表面に生成された熱変質層が機械的なアブレーション作用によって除去されるといったメカニズムでNPDから切りくずが除去される場合には,すくい面を1 nm Rz以下の粗さに成形できることが明らかになった. 平成25年度にはCoを炭化ホウ素B4C, 窒化ホウ素BN,窒化ケイ素Si3N4,ならびに酸化アルミナAl2O3といった高比熱材料で置換したPCD製円板を試作し,レーザ成形したNPD製ノーズRバイトのすくい面と逃げ面に対する乾式研削を行った.その結果,CoをB4Cで置換したPCD製円板をツルーアに使用した場合には,すくい面を0.5 nm Rz, 逃げ面を2 nm Rz前後の値に成形することができた.すくい面と同様に逃げ面の粗さを0.5 nm Rzの粗さに成形できれば,切れ刃の丸み半径を1 nm以下の値に成形することも不可能ではないと考えている.
|