実験グループ(リーダー:中野 健)は、透明なポリジメチルシロキサン製のベルト(長さ:120 mm、幅:20 mm、厚さ:3 mm)と透明なガラス製の円筒(外径:60 mm、内径:57 mm、高さ:40 mm)の面接触部を対象として、固着すべり遷移の瞬間に生じる接触界面のダイナミクスを、マイクロ秒の時間分解能で可視化する実験装置を構築した。本装置では、(1) ベルトの巻付角、(2) ベルトの初期張力、(3) ベルト両端の駆動方向、(4) ベルト両端の駆動速度をパラメータとして、(1) 真実接触面積を同定するための光学像、(2) ベルトの内部応力を同定するための光弾性像、(3) ベルト両端の張力、(4) 固着すべり遷移にともない発生する異音を、単一のクロックで同時計測することができる。例えば、巻付角を45度、初期張力を30 N、駆動方向をベルトの接線方向、駆動速度を1 mm/sとしたとき、固着すべり遷移の瞬間に、真実接触面積は緩み側から張り側へ急速に収縮し、収縮した真実接触面積の先端付近から張り側へ向けて高速な波(伝播速度:200 m/s)が0.1 msの間隔で発生することにより、10 kHzの異音が発生することがわかった。このように、本装置を用いると、接触界面のダイナミクスを可視化を通して、いつどこで振動や異音が発生したかを特定することができる。一方、解析グループ(リーダー:尾崎 伸吾)は、実験グループが昨年度までに得た結果に基づき、スライダとベースブロックで構成される縦長な線接触部を対象として、スライダの弾性的な内部変形と接触界面の固着すべり遷移を考慮した摩擦振動(スティックスリップ)を再現可能な有限要素法モデルを構築した。
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