研究概要 |
申請者は,独創的な広視野レーザ顕微鏡を用いて,円筒面の全面を短時間で高精度に観察できる手法を世界ではじめて開発した.この装置は広い視野を観察することを主眼としたシュリンクフィッタ技術援用レーザ走査方式を用い,微細レーザスポット光の反射光強度のみを利用している.そのため,横方向の空間分解能は高いが,高さ方向の分解能は数μmにとどまっている.そこで,高さ方向の分解能を向上させるために,レーザ光の位相を利用する独自のレーザ走査干渉法を用いることを立案した.これまでの高い横方向分解能と併せて,高さ方向もnmレベルの高分解能を実現できる画期的な観察装置の開発を行う.これにより,円筒面などの転がり要素全面の表面形状を高い分解能で観察する手法の開発を,世界に先駆けて実現することを研究目的とする. レーザ走査干渉を生じさせるためには,nmレベルで円筒観察物表面と参照板の間隔を一定に保つ必要がある.そこで,円筒観察物の回転に伴い,回転軸がぶれないように円筒観察物の回転支持部には空気静圧軸受(科研費購入)を採用した.空気静圧軸受据え付けには,防振技術が要求される.今回はこの防振技術に手間取り,レーザ走査干渉縞を得るには至らなかった. これと並行して,広視野レーザ顕微鏡のさらなる計測時間の短縮と,観察画像の高精度化をねらい,平面ミラーをポリゴンミラーに変更することと,走査レンズを新たに設計することを実験機を作製して検討した.ポリゴンミラーに変更した結果,観察の高速化は可能であることが分かった.また,視野を狭めて解像度を向上させた走査レンズを新たに設計・製作した.しかし,ワーキングディスタンスが短くなったために装置の操作性は少し悪くなってしまった. 上記の通り,研究の進み方は項目毎に異なるが,総じて言えば,これまでのところ研究はほぼ計画通りに進んでいると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,広視野レーザ顕微鏡の高さ方向の解像度をレーザ干渉技術を用いてnmレベルまで改善することである.平成23年度の計画では,円筒形状の観察物をnmレベルで回転軸のぶれが無いようにすることであった.そのために,空気静圧軸受を導入し,広視野レーザ顕微鏡と円筒観察物の回転軸とのアライメント調整機構を整備した.このため,次年度以降の早い段階でレーザ干渉像を得ることができるので,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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