研究課題/領域番号 |
23360081
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
阿部 豊 筑波大学, システム情報系, 教授 (10241720)
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研究分担者 |
渡辺 正 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 特命教授 (50391355)
松本 聡 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (90360718)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 液滴浮遊 / 宇宙環境利用 / 非線形 / ダイナミクス / 無容器プロセッシング |
研究概要 |
本年度においては、静電浮遊技術ならびに超音波浮遊技術を用いて、液滴浮遊実験を実施するとともに、新しい非線形理論の構築と数値解析を行った。静電浮遊技術を用いた実験においては、浮遊液滴の回転分裂の粘性依存性を利用することで、これまで不可能であった範囲の粘性係数について、新たな測定法を提案した。この手法の測定精度の評価を行って、その誤差要因を明らかにした。本手法の確立のためには、今後、粘性流体の非線形な分裂挙動を実験的に、より詳細に捉えるとともに、その実験情報をもとに浮遊液滴の非線形挙動を、理論・数値記述することが不可欠であることを明らかにした。超音波浮遊技術を用いた実験においては、浮遊液滴の界面変形を伴う内外の流動挙動の非線形ダイナミクスが、ストークス層のような液滴表面での微細構造に起因する可能性を明らかにした。これを更に実験的に把握することが必要であるが、ストークス層の厚さが数マイクロンと極めて薄いものと推定されることから、浮遊液滴界面を通した内外部流動の相関について実験を行っていく。また、浮遊した水液滴の外部流動が、通常重力環境下においては、液滴の下に一つのトロイダル渦が出来るのに対して、過去に実施した微小重力環境下の実験では、液滴の上下に二つのトロイダル渦が観測されている。しかし、この違いがどのような要因によって生じるかについては、いまだ明らかにされていない。今後、このような浮遊液滴の非線形ダイナミクスを明らかにしていく。そのために、より大型の液滴が浮遊可能な新型の音場浮遊用リフレクターを試作するとともに、これまでにない新しい浮遊液滴の非線形理論を構築し、よりシンプルで分かり易い物理的考察を行った。更に、無容器プロセッシングにおける浮遊液滴の加熱実験や溶融状態からの固化実感、ならびに揮発性液滴の蒸発実験を行って、基礎的データを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超音波による液滴浮遊装置を用いて、低融点溶融液滴を浮遊させ、溶融状態から凝固に至る過程における非線形でダイナミックな流動挙動が、溶融液滴の凝固過程に及ぼす影響についての実験的な知見を得た。実験は、超音波によって浮遊させて低融点融液の液滴をレーザー加熱した後に凝固させることによって、浮遊液滴の界面変形・変動・振動さらには界面不安定性などの非線形でダイナミクスな挙動が、溶融液滴の凝固時における過冷度や核生成や凝固過程に及ぼす影響について実験的に明らかにした。更に、揮発性のある流体を用いた蒸発挙動についての実験的知見を得た。その結果、これらの結果が、浮遊液滴の界面変形を伴う内外の流動挙動の非線形ダイナミクスが、ストークス層のような液滴表面での微細構造に起因する可能性を明らかにした。 静電浮遊技術ならびに超音波浮遊技術を用いて、液滴浮遊実験を実施するとともに、新しい非線形理論の構築と数値解析を行ってきた。静電浮遊技術を用いた実験においては、浮遊液滴の回転分裂の粘性依存性を利用することで、これまで不可能であった範囲の粘性係数について、新たな測定法を提案した。 以上の結果に対して、シミュレーションの高速化により詳細な流れ場を実験と比較することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
超音波浮遊実験においては、相変化のある実験を行って、その結果と液滴内外の流動との比較を行って液滴界面の非線形挙動及び内外の流れ場を明らかにする。そのためには、実験的にストークス層の状態を把握することが必要である。ストークス層の厚さが数マイクロンと極めて薄いものと推定されることから、浮遊液滴界面を通した内外部流動の相関について実験を行って浮遊液滴の非線形挙動を明らかにしてゆく。 また、本研究で開発した粘性係数測定手法には、いまだ測定精度に相当の誤差が認められている。手法の確立のためには、今後、粘性流体の非線形な分裂挙動を実験的により詳細に捉えるとともに、その実験情報をもとに浮遊液滴の非線形挙動を、理論・数値記述する手法を開発することが求められる。
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