研究課題/領域番号 |
23360083
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 滋 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60271011)
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研究分担者 |
小菅 真吾 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40335188)
田口 智清 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (90448168)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ボルツマン方程式 / 一般すべり流理論 / 希薄気体効果 / 分子気体力学 / 2次すべり / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究は,軽度な「系の微小化」あるいは「気体の希薄化」効果を取り入れた流体力学的枠組みである一般すべり流理論の整備と,その非定常系への新展開を試みるものである. 本年度は,分子間力や気体-表面相互作用模型を特定のものに制限することなく,線形理論の範疇における非定常型の一般すべり流理論の枠組みを構築した.その結果,一般の理解とは異なり,「ほふく流」を対象とする線形理論においても気体の圧縮性に効果が流体力学方程式のレベルで現れることが明らかになった.時間発展系に特有の新しい温度の跳びは2種あるが,そのうちの一方はこのことが要因であり,蒸発・凝縮を伴う界面に現れるものと同種であることが明らかになった(もう一歩は前年度に発見した新種の温度の跳びである). つぎに前年度に非定常系においても有効性が確かめられた対称性理論を応用し,一般すべり流理論に現れるすべてのすべり係数の間に成り立つ関係をまず調べた.その結果,理論に現れるすべり係数はすべて,古典的な3つのすべり流問題(熱ほふく流,せん断流,温度の跳びの3問題)の解から構成可能であることを突き止め,すべてのすべり係数の表現公式を導いた.この公式は様々な分子間力ポテンシャル,気体-表面相互作用模型に対して成り立つ一般公式である.さらにこの公式をもとに剛体球分子模型,拡散反射境界条件に基づくすべてのすべり係数をクヌッセン数の2次のレベルまで導出することに成功した. 以上のように,本年度において,非定常系における一般すべり流理論の基本的枠組みが構築され,境界層の内部構造の詳細を除いて,それを定量的に完結するすべての物理的係数が整備されたといえる.また,境界層解析の基礎となる積分方程式型解析方法の開発が進行中であり,その予備段階の成果を利用した数値解析によりクルックス放射計の回転原理を新しい視点から見直す知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ線形化ボルツマン方程式の対称的性質を利用する議論によって,一般すべり流理論にあらわれるすべり係数が,古典的な3つのすべり流問題の解から,その一部だけではなくすべて構築できることが明らかになった.このことは理論上の大きな進展,発見である.実際,このことにより,直接の取り扱いが難しい問題を数値計算することなく,すべてのすべり係数を具体的に整備することがすでに本年度に達成できている.一方で,境界層内部の構造解析のための数値解析法はまだ完成に至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では,一般すべり流理論における境界層の構造解析も進める予定である.この解析法の開発は進行中であり,予備的結果は得られているものの,まだ最終的に狙っている成果を得られる段階には至っていない. 最終的に狙っている成果を得るには従来の単純な差分解析法だけでは不十分である.境界層問題が空間1次元問題に帰着されていることを利用して積分方程式が他に問題を帰着する定式化が有効である.現在,この方針のもとに境界層解析の研究を進めている.計算負荷の面では,いまのところ本研究補助金で整備した計算機システムによりその解析が十分可能な見通しを得ている.
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