研究概要 |
本研究の目的は,熱音響現象を解明するための理論体系を構築し,その成果を熱音響式熱機関に応用することによってその実用化を促進させることである.まず気体が不安定化する臨界条件を導出するために,線形近似ではあるが一般的に適用できる熱音響波動方程式と,これから導かれる境界層理論と細管理論を用いて,本年度は,以下の3つの大きな計画を予定していた:(1)境界層理論の応用,(2)細管理論の展開と応用,(3)理論結果の実験による検証. 課題(1)については,(a)両端が閉じた直管における対称モードの不安定化と圧力波発生の解析,(b)空洞を取り付けた共鳴管での不安定化と圧力波発生の解析,(c)スタックを使わないループ管路における不安定化の臨界条件の導出の3つの課題を予定しており,(a),(c)に関しては予定通りの成果が得られ,日本流体力学会年会,日本機械学会関西支部総会講演会にて成果を発表した.(b)については,時間的な余裕がなく進展はない. 課題(2)については,(a)拡散・波動方程式の解析とスタックに対する等価境界条件の導出,(b)等価境界条件を用いた臨界条件の導出,(c)管路の壁面温度の影響の評価の3つの課題を計画していたが,概ね目標は達成できた.特に(c)に関しては予想以上の進展があり,成果はアメリカ音響学会および第61回理論応用力学講演会で発表し,さらにはJ.Fluid Mech.に掲載されることになった. 課題(3)については,(a)a.ループ管路の設計と製作,(b)共鳴管の製作の2つの課題を計画していたが,(a)に関しては実験装置のうち,特にスタックとそれに温度勾配を与える熱交換器の設計と製作を行った.(b)の課題については,時間的な余裕がなく理論と同様次年度以降に見送ることになった. 以上より,課題(2)の(c)に関しては予定以上の進展と成果が得られた反面,時間的な制約により(1.b),(3.b)の研究は進展が無かったが,概ね期待以上の成果は得られたと考えている.本研究に関連して,第8回日韓熱流体工学会議に招待をうけ,熱音響に関する基調講演を行った.
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