研究概要 |
本研究の目的は,流体力学の立場からはこれまで殆ど研究されていない,温度勾配のある壁面に囲まれた気体に対して,粘性や熱伝導性による拡散が引き起こす不安定現象の理論を構築し,実験でその正当性を検証することである.この現象は結果的に気体内に圧力変動(音)を発生させるので,熱音響現象とも呼ばれる.本申請者はこれまで,拡散層が薄い場合には境界層理論が非線形現象の記述も含め有用であることを明らかにしてきたが,昨年,拡散層が厚い場合の細管理論確立への突破口を開いた.研究をさらに推し進めることによって熱音響現象の理解を深め,定量化の方法が確立できると考えている.本研究では理論体系を完成させ,様々な条件下での不安定化の臨界条件を明らかにするとともに,非線形現象の解明と熱音響式熱機関への応用を目指す. 本研究の課題である(1)境界層理論の応用, (2)細管理論の展開と応用, (3)理論結果の実験による検証の3つのうち,今年度は計画より遅れている課題(3)を重点的に研究を実施した.この結果,直管での熱音響自励振動の発振が確認できた.発生する最大圧力振幅は,約165dB (SPL)に達し,非線形振動である.一方,ループ管路においても自励振動の発生を確認したが,直管の場合に比べては圧力振幅のレベルが低い.いずれの場合にも発生する振動と理論結果との定量的な比較を行う段階にはまだ到達しておらず,よりよい条件を目指して実験装置の改良を行っている.
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