研究概要 |
本研究は,高温高圧環境下における異性体バイオ燃料の予混合乱流燃焼メカニズムを明らかにし,高圧反応動力学と乱流との相互作用に基づく極限環境乱流燃焼の学理構築を図ると共に,多様なバイオ燃料燃焼システムの設計と制御に対する燃焼学的根拠に基づく指針を提示することを目的とする. 本年度は,液体燃料である1-プロパノール,2-プロパノールを高圧燃焼容器内で安定的に蒸発させ空気と混合させる蒸発装置を設計製作した.将来のDNS計算との比較が容易な矩形出口を有する乱流燃焼バーナも設計製作し,これらを既存の空気予熱装置と結合させて定常動作することを確認した.高圧燃焼実験に先立ち,空気を予熱した高圧容器内で熱線風速計による乱流計測を実施した.乱れ発生多孔板を多種用意して実験し,空気流速と乱れ強さ,乱流特性スケールとの関係を求めデータベースにした. 高圧乱流燃焼実験では,0.5MPaにおいて1-プロパノールおよび2-プロパノールと空気との乱流予混合火炎を高圧容器内に安定させることに成功した.比較のためメタン空気乱流予混合火炎の燃焼試験も行った.プロパノール火炎の分光学的計測の第一段階として0.5MPaにおいてOH-PLIFを実施し,新たに導入した超高感度カメラを用い十分な鮮明度でPLIF画像を得ることができた.その結果を踏まえ,今後予定しているCH2O-PLIFおよびPIV計測の光学系配置の検討を行った.OH-PLIF画像から乱流火炎領域の火炎凹凸を観測すると共に,画像解析から平均反応進行変数分布,火炎面密度分布,乱流燃焼速度の乱れ強さと圧力依存性を求めた.その結果,2-プロパノール空気乱流予混合火炎は,1-プロパノールおよびメタン火炎に比較して乱流火炎領域の凹凸の微細化が顕著であり,乱流燃焼速度も増大していることがわかった.異性体による乱流火炎特性の違いについて数値解析を含む検討を開始した.乱流火炎領域の温度変動計測に関して,導入した半導体レーザーを光源とするレーリー散乱法の試験を開始した.CHラジカルからの自発光によるSN比低下が見られたため,次年度対策を施すこととした.
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