研究課題/領域番号 |
23360092
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大宮司 啓文 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (10302754)
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キーワード | ナノ流体力学 / 化学物理 / 化学工学 / 物質移動 |
研究概要 |
吸着材、フィルタ、触媒層、電極など、ナノ細孔を有する工業材料の高性能化・高機能化は、グリーン・イノベーションのコア技術の一つと考えられる。ナノ細孔内部の物質移動が正確に理解できれば、物質移動の視点から細孔構造や表面特性を最適化することが可能になり、ナノ細孔を有する工業材料の新たな設計指針の提案が期待される。本年度は、ナノ細孔内部に満たされた液体中を移動するイオンの移動現象に着目する。理論解析、および合成されたナノ細孔膜を用いた実験計測により移動現象を明らかにすることを目的とする。本年度の成果は、高い規則性をもつ3次元細孔構造をもつメソポーラスシリカ薄膜を合成し、その細孔内部を流れるイオンとプロトンの移動現象を実験計測し、特徴的な移動特性が現れることを示した点にある。具体的には、イオン濃度が低く、溶液のデバイ長さが細孔径よりも大きい場合、すなわち、細孔内部にユニポーラな溶液が満たされている場合において、薄膜の両端に印加する電圧を大きくすると、流れるイオン電流が曲線が非線形に大きくなる条件があることを示した。この現象は、より複雑なナノ細孔構造をもつ材料の開発において有用な知見になると思われる。また、メソポーラスシリカの1次元配向膜の合成において、当初の計画よりも、より高い精度で細孔構造を制御できることを見出した。この成果により、「イオン電流計測デバイス」をより高精度で製作することが可能になり、また、製作したデバイスを用いた移動現象の実験計測においても、より精度の高い議論ができることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
配向性の高いナノ細孔をもつメソポーラスシリカ薄膜の合成、特に、1次元配向膜の合成において、当初の計画よりもより高い精度で細孔構造を制御できることを見出し、その実験に多くの時間を費やした。その結果、「イオン電流計測デバイス」を製作し、実験計測まで研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在は「イオン電流計測デバイス」の製作をはじめており、来年度の9月までには製作したデバイスを用いた実験計測を行う予定である。当初の計画通り、来年度中に研究全体の総括まで完了する予定である。
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