吸着材、フィルタ、触媒層、電極など、ナノ細孔を有する工業材料の高性能化・高機能化は、グリーン・イノベーションのコア技術の一つと考えられる。ナノ細孔内部の物質移動が正確に理解できれば、物質移動の視点から細孔構造や表面特性を最適化することが可能になり、ナノ細孔を有する工業材料の新たな設計指針の提案が期待される。 本年度は、平滑な表面ではなく、様々なマイクロ構造体のある表面におけるメソポーラスシリカ薄膜の合成に取り組んだ。薄膜の厚みのみならず、薄膜内部の細孔構造や細孔配列について分析し、薄膜合成のメカニズムについて考察した。分子論的なメカニズムのみならず、溶媒の蒸発速度、溶液の濃度分布など、流体力学的な合成条件についても検討し、一様な細孔配列の最適条件を見出した。今後、様々な形状の基材にメソポーラスシリカ薄膜を成膜し、マイクロスケールで細孔配列をすることに展開する予定である。また、高精度に構造制御されたメソポーラスシリカ薄膜内部を流れるイオン電流について実験計測を行った。具体的には、メソポーラスシリカ薄膜とマイクロ流路からなる評価用マイクロチップを作成し、ナノ細孔とマイクロ流路に電解質水溶液を満たし、イオン電流を計測した。メソポーラスシリカの構造によって、非線形の電流-電圧曲線など、特徴的な電流-電圧曲線が得られることを明らかにした。今後、イオン電流のみならず、様々なガス、液体の移動現象についても実験計測および理論解析を行う予定である。
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