研究課題/領域番号 |
23360095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越 光男 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20133085)
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研究分担者 |
寺島 洋史(石原洋史) 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20415235)
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キーワード | 詳細反応機構 / 炭化水素燃料 / 簡略化 / 数値流体計算 / エンジン燃焼 / エントロピー最大化法 |
研究概要 |
本研究の目的は超大規模詳細反応機構に基づいた数値流体シミュレーションを実現するための革新的アルゴリズムを確立することにある。「超大規模詳細反応機構」として炭化水素燃料の燃焼反応機構を取り上げる。まず炭素数4-16のノルマルアルカンの燃焼反応機構をMiyoshiにより開発された反応機構自動生成プログラムKUCRSにより生成した。もっとも大きな反応機構であるn-C16H34(ノルマルセタン)は化学種7000、素反応28000を含む。これらの反応機構をDRG(Directed Relation Graph)法により簡略化した。この簡略化によりノルマルセタンの反応機構は1/3程度に圧縮できるが、流体シミュレーションに組み込むためにはさらなる簡略化が必要である。DRG法以外のいくつかの方法も試みたが、DRG法以上には簡略化できないことが明らかとなった。 DRG法のような化学種を減らして骨格のみの反応機構を作成する簡略化法では限界があることが明らかとなったので、まったく異なる原理での簡略化法として、最大エントロピー法に基づく方法であるRCCE(Rate Controlled Constrained Equilibrium)法を開発した。本年度はとくに状態量に対する束縛条件として圧力(P)とエンタルピー(H)を用いる方法を開発した。この方法では状態量以外の束縛条件として何を選ぶかによって簡略化の精度が決まる。本研究では束縛条件として化学種の線形結合を用いているが、どのような化学種の線形結合をとるべきかをCH4からC8H18までの燃焼反応機構について系統的に検討し、分子構造に基づいて自動的に束縛条件を選定する方法を提案した。この結果、800化学種から構成される反応機構でも40程度の束縛条件により着火誘導時間などの燃焼特性が予測できることが明らかとなった、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標はエントロピー最大化法の定式化とこれを用いた詳細反応機構の簡略化法のプログラム開発であった。この目標に対して (1)H,P一定(断熱定圧)条件での定式化を完了した。 (2)エントロピー最大化法による詳細反応機構の簡略化のプログラム開発を完了した。 したがって、設定した目標はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度に開発したRCCE法を流体力学計算に組み込むための方法論の開発を主要な目標とする。本年度開発したH,P一定のRCCE法は非圧縮性流体に組み込む場合にはマッチングがよいが、圧縮性流体計算に組み込む場合には密度(あるいは比体積)と内部エネルギーを変数としたほうがよい。この場合にも対応できるように、体積と内部エネルギーが一定の場合にRCCE法を拡張する。 今年度定式化したRCCE法をノルマルアルカンの詳細反応機構の簡略化に適用することについては成果を上げることができたが、実用燃料への適用を考えた場合にはイソアルカンやアルケン、アルコールなど広範な燃料に対応することが必要である。このために次年度ではノルマルアルカンのみならず、イソアルカンやガソリン標準燃料(ノルマルへプタンとイソオクタンの混合燃料)に対してもRCCE法を適用することを試みる。これらの燃料に対する束縛条件の選定法を確立することがまず必要となる。 上記の二つの目標はRCCE法の適用範囲を広げることに主眼が置かれているが、他の重要な課題はRCCE法を流体計算に組み込む方法を確立することにある。RCCEほうでは、束縛条件を設定することにより反応系を記述するのに必要な変数を減らしているが、これを流体方程式とカップルさせるためには束縛条件に対応する拡散係数や熱伝導率などの輸送係数をどのように定義するかが問題となる。これらの課題に対しても次年度に定式化を行う。
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