研究概要 |
700~1000℃という高温で作動する固体酸化物形燃料電池(SOFC)の燃料極としては,ニッケルと酸化物の混合多孔質が有力な候補である.このような電極では,電極自身に含まれるニッケルを触媒として,メタンなど炭化水素燃料を電池内部で水蒸気改質する直接内部改質が可能となる.この改質方法には,システムをシンプルにできることや,電気化学反応等によって電池内で発生した熱を改質に有効利用できることなどの利点がある.しかし,SOFCの燃料極で炭化水素燃料の直接内部改質をおこなうと,改質反応にともなう強い吸熱のため燃料流入り口付近で局所的に温度が下がり,大きな温度勾配が生じてセルが割れる恐れがあり,対策が必要である.問題の本質は下流で使う燃料まで上流で一気に改質されてしまうことであり,水蒸気改質をいかに緩やかに進行させるかがカギとなる.本研究は,直接内部改質時にセル温度を均一に保つために,水蒸気改質反応を緩やかに進行させる方法の確立をめざす/具体的には,まずSOFCの燃料極を模したニッケルと酸化物の混合多孔質を自作する.混合割合や焼成条件を変更することで,多様なミクロ構造を持つ燃料極を作製し,それらについて供給ガスや温度を制御した精密な改質反応実験を行なう.収束イオンビームをもつ走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)等を活用して燃料極のミクロ構造データを取得し,改質性能とミクロ構造の相関付けをおこなう.得られたミクロ構造データを活用する改質反応モデルを構築し,数値解析プログラムを開発する.解析結果と実験データを比較してプログラムを検証したうえで,改質活性領域の特定をおこなう.現有の単セル解析プログラムに改質反応モデルを組み込み,改質反応の抑制に有効な構造制御を,数値計算結果をもとに提案する. 平成23年度は現有の実験装置を改造して改質反応実験を行なった.ニッケルと酸化物の混合多孔質を自作し試料とした.電気ヒータにより温度を制御しながら混合ガス(メタン,窒素,水蒸気)を流し,排出ガス成分の分析を行った.供給ガス成分,流量,温度等がパラメータである.改質実験後の試料について,自動比表面積測定装置による表面積密度の測定,SEMによる2次元画像観察,FIB-SEMによる3次元ミクロ構造の定量化を行った結果,ニッケルと空隙との接触面積密度と反応速度に強い相関があることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は前年度に引き続き改質実験を行ないデータの蓄積に勤めるとともに,数値解析プログラムの開発を加速する.また前年度の実験条件では,多孔質内ガス拡散の影響を明確に現れなかったため,実験条件の追加,あるいは改質反応が生じないより単純な系でのガス拡散実験を行なうことも視野に入れる.
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