前年度までに開発した近赤外カメラと狭帯域透過フィルタを組み合わせた温度水分量同時イメージング装置を改良し、温度分解能と濃度分解能を検証した。このイメージング装置は、水の温度感度波長(1412 nm)と非温度依存性の等吸収波長(1442 nm)を高速交互照射して両波長の吸光度画像を取得するものである。温度分解能は0.1 K、水モル濃度(溶質濃度と相反関係)の分解能は0.1%以下であることを示した。 次に、流路深さが0.05 mmと0.5 mmのY字型マイクロ流路に温度と濃度が異なるエタノール水溶液を流し、2層流形成すなわち界面形成させたときの吸光度画像を取得した。エタノール水溶液の吸収スペクトルの重回帰分析結果をもとに2波長の吸光度画像を温度と水分量の画像に変換した。これによって界面付近における熱拡散および物質拡散現象を可視化できた。 年度後半には、同流路にHCl水溶液とNaOH水溶液を流し合流させたときの2波長吸光度画像を分析した。画像取得の前に、HCl水溶液とNaOH水溶液の温度と濃度毎の吸収スペクトルを詳細に調査し、水と同じく波長1412 nmと1442 nmを利用することが有効であることを確認し、重回帰分析によって温度と濃度に対する係数を求めておいた。濃度画像は両水溶液の差異を明瞭に表したが、合流部の界面付近では、恐らく中和反応により複雑な成分濃度変化と温度変化が生じているため、濃度分解能は低下した。この課題は今後の研究で取り組む予定である。
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