研究概要 |
本課題では機械構造物に入力される衝撃にともなう応答を制御する目的で,玉突きの原理とアクティブ制御を融合した,運動量交換型ダンパ機構について研究している.その応用としで,次世代惑星探査機の着陸時衝撃応答制御に活用し,リバウンドや転倒の防止を図り,ロバストで高信頼かつ経済的な着陸機構の実現を目指している.本年度交付申請書記載の二点の研究実施内容の内,一点目の「衝突問題においてリバウンドを最小化するための最適なパッシブ要素のパラメータに関する考察ならびにパッシブ要素とアクティブ制御を併用するハイブリッド制御機構の提案」については,運動量交換型の機構において剛性の最適化がリバウンド抑制に大きな役割を果たしていることを明らかにし,この知見をもとにアクティブ制御を併用して見かけの剛性を理想的な値に近づける剛性制御手法を導入した.1軸方向(1次元)のみの運動を考えた基本的な実験装置を製作し,シミュレーションと実験により剛性制御のリバウンド抑制性能や着地面パラメータの変動に対するロバスト性などを示した.二点目の「多脚落下衝撃実験システムの設計と製作」については,上記1次元実験装置を拡張し,2次元での実験が可能な2脚実験装置を設計製作した.これを対象にした検討については来年度以降実施する.なお,これまで考えてきたダンパ質量を上方に飛ばす方式の運動量交換と併用して,別のダンパ質量を下方に落す方式の研究も行い,シミュレーションにより有効性を確認した.また,制御対象に柔軟な部分がある場合の検討も行える準備を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度交付申請書に記載の二点の研究実施内容に関してはおおむね順調に遂行し,一点目に関する研究成果をまとめた内容を,3月に英文誌に投稿した.本年度はさらに関連する他の内容にまで進んで取り組むことができた.ただし,複数衝撃を受ける多自由度の制御問題には未着手であり,次年度以降研究を進める.
|
今後の研究の推進方策 |
探査機上方への運動量交換のみならず,別のダンパ質量を下方に落す方式は,着陸時の加速度応答低減に効果的であることがシミュレーションにより明らかになった.次年度前半はこの内容の実験的な検討を実施する.それに引き続き,次年度後半は2脚の実験装置を前提とした2次元での制御問題を検討する.一方,本年度製作した着地面へ落下させる実験装置の他に,水平方向に衝撃を加えられる装置の導入も進めており,これを用いた衝撃応答の研究も進めて行く.
|