研究課題/領域番号 |
23360108
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
峯田 貴 山形大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50374814)
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研究分担者 |
古屋 泰文 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (20133051)
熊木 治郎 山形大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (00500290)
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キーワード | AFM / デュアルカンチレバー / 磁性形状記憶合金薄膜 / 近接探針 / ナノ加工 / その場計測 |
研究概要 |
単結晶Si基板の熱酸化膜表面へFePd磁歪形状記憶合金のスパッタ成膜に取り組み、微小な柱状結晶が成長し、(111)結晶面へ強く配向した薄膜が得られることを見出した。FePd薄膜をエッチングおよびリフトオフ法により線幅10μm程度まで微細パターニングできる条件を確立し、SOI構造の多層シリコンのMEMS構造化プロセスと組み合わせて、高精度のFePd/Si積層構造のMEMS型マイクロカンチレバーを試作することができた。形成したカンチレバーのFePdの膜厚が4μmの場合には、低い磁場領域で磁歪効果により変位する特性が得られた。膜厚がサブμmの揚合には磁力の影響により磁場方向へ変位する特性であったが、いずれの場合も先端では1μmを超える変位が得られ、目的とするデュアルカンチレバーの上下動作には十分な特性を得る見通しを得た。 ナノ加工と計測のプローブ変更時の位置補正精度向上には探針間の近接化が有効であり、カンチレバー先端に搭載予定のナノ探針の近接形成プロセスの開発に取り組んだ。探針間ギャップを左右するシリコンエッチングによる溝加工条件の最適化を図り、さらにエッチング溝を熱酸化膜と塗布型保護材によって埋め込んでエッチバックするプロセスを開発し、ギャップ0.5μm程度まで近接したデュアル探針形成を可能にした。 また、シングルプローブを用いた高分子材料のナノ加工の特性評価を実施し、100nN前後の垂直力を加えながら水平方向にスクラッチすることによって、紐状のビアルロン酸バンドルを機械的に切断できることを見出した。さらに、高温AFMの条件を最適化してポリメチルメタクリレート結晶薄膜の分子鎖の融解挙動のその場観察を可能にし、この融解は可逆的であることより探針先端による結晶構造破壊の効果が無視できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁歪形状記憶合金薄膜の成膜および微細パターニング技術を確立し、マイクロカンチレバー形成に成功し、磁場印加による変位特性の基礎的なデータ収集まで先行して実施することができた。また、探針形成についても新しい形成法を開発して良好な探針形成の見通しが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
成23年度に開発した探針先端形成プロセスを安定して実施するための微細加工条件を検討し、カンチレバー細部の設計を適正化してデュアル探針を一体化したデュアルカンチレバー試作に取り組む。磁歪効果と磁力による変形の双方を考慮したマイクロカンチレバーの安定した駆動についても検討する。試作したデュアルプローブを汎用型原子間力顕微鏡へ搭載し、カンチレバーを共振させるダイナミックモードによる表面計測への適用も含め、ナノ加工および計測の操作性について検証していく。また、シングルプローブを用いて、ナノスケールでの加工および計測時における探針の作用、高温下での高分子の構造に与えるナノチップ先端の影響について評価を継続しいていく。
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