研究概要 |
原子間力顕微像(AFM)を低ノイズ観察しながら機械的ナノ加工を施すナノプローブの実現を目的として,近接Siナノ探針おとび磁歪薄膜アクチュエータを搭載したデュアルカンチレバーを開発し,ナノ加工および計測の基礎的な評価を行った。 1. デュアル近接プローブの作製および特性評価 評価用MEMSカンチレバーを試作し,FePd,FeGa,およびNiの各種の磁歪合金スパッタ薄膜について,種々の膜厚における磁歪特性を詳細に評価し,Fe-40at%Pd合金膜では,1µm厚で50ppmを超える磁歪を発現することを見い出した。多層単結晶シリコン(SOI)基板を用い,前年度までに確立した自己整合プロセスを適用して近接探針を形成し,さらにFePd磁歪膜を積層してカンチレバー形状にエッチング加工するプロセスを確立して,約2µm高さの近接探針を搭載した150~170µm長の直交型デュアルカンチレバーを試作した。積層したFePd膜(1µm厚)の磁歪効果により,300 Gaussの磁束印加で観察および加工用の探新先端を独立して1µm以上変位させることができ,外部磁場によるプローブ切換が可能となった。それぞれのカンチレバーの共振周波数をずらした設計とし(57, 80 kHz)に設定し,片方のみ共振させたタッピング観察が可能であることを確認した。汎用AFM装置へ磁場印加機構を取り付け,デュアルカンチレバーを切り替えながら高解像のAFM像を安定して観察可能であることを実証した。 2. AFMプローブによるナノ加工・計測手法の確立 マイカ基板上に形成したシンジオタクチックポリメチルメタクリレート(ガラス転移温度Tg:100℃)孤立鎖の高温AFM観察を行ない、前年に確認した低Tgの分子の場合と同様の分子鎖の凝集が100℃で開始することを見出した。分子の凝集開始温度は、Tgではなく基板との接着強度に依存すると考えられる。
|