研究課題/領域番号 |
23360109
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
渡辺 敏行 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10210923)
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研究分担者 |
戸谷 健朗 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術職員 (50397014)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高分子 / レオロジー / アクチュエーター / 光応答性 / 光粘性流体 |
研究概要 |
剛直な分子鎖を持つ高分子の一部が折曲がると、ドーナッツのようなトロイダル構造ができることはDNAによる実験で確認されている。そこで、DNAのように剛直な光応答性アミド酸オリゴマーに蛍光観察部位であるフルオレンを導入した、PR(Photorheological Fluid)流体を合成した。光照射前には分子鎖は伸びているが、紫外光照射によりアゾベンゼンが折曲がると、そこを中心にトロイダル構造が形成されることを原子間力顕微鏡により確認した。 PR流体の光照射時の粘性係数の変化を粘度計で確認した。その結果、紫外光照射により粘性係数が減少し、また、可視光を照射すると、粘性係数は元に戻った。この粘性係数の変化は可逆的であった。また、GPCで光照射前後の分子量を測定すると、光照射前には分子の会合体が確認できたが、光照射後には会合体が小さくなっていることが判明した。 この光照射前後でのアゾベンゼンのトランス体からシス体への光異性化速度の分子量依存性について解析した。その結果、光異性化速度は高分子の分子量が大きくなるほど低下することを見出した。これは高分子鎖間のπ電子-π電子相互作用や水素結合に起因することを明らかにした。また、高分子中に嵩高い分子を導入することによって、高分子鎖の凝集を防ぎ、光異性化速度を向上させることに成功した。 また、高分子の光照射による運動を連続的に計測するためのプローブの開発に取り組んだ。その結果、ステロイド骨格を有するホスト材料に三重項励起状態の準位が2.8eV以下の芳香族第二級アミンを導入すると秒オーダー以上のりん光が観察できることを見出した。このプローブを高分子に結合し、光照射による分子運動の観察に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光照射前後の高分子鎖の形態を当初は蛍光のパターンによって確認する予定であったが、高分子鎖の導入した蛍光分子の発光がアゾベンゼンに吸収され、うまく観察できなかった。そこで光照射によるトロイダル構造の形成を原子間力顕微鏡で確認した。 今後はより長波長の蛍光を発生するプローブ分子を高分子鎖中に導入し、蛍光観察も可能にする。
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今後の研究の推進方策 |
粘性係数を粘度計によって求めたが、レオメーターによる測定に変更し、貯蔵弾性率と損失弾性率を計測する。また、高分子溶液の濃度によって、貯蔵弾性率が損失弾性率を上回る臨界濃度を求める。 合成した高分子の光異性化速度を向上させるための分子設計に取り組む。特にモノマーとして使用する酸無水物のかさ高さを変更したり、長鎖アルキル基の導入を試みる。また、粘性係数の変化を最大にするための最適なアゾベンゼンの導入率を探索する。 さらに合成したPR(Photorheological Fluid)流体を用いて、光応答性アクティブダンパーを試作する。
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