研究課題/領域番号 |
23360114
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝明 香川大学, 工学部, 准教授 (10378797)
|
研究分担者 |
寺尾 京平 香川大学, 工学部, 助教 (80467448)
|
キーワード | マイクロ・ナノデバイス / マイクロマシン / フォトリソグラフィ / 染色体解析 / 細胞操作 |
研究概要 |
本研究では、細胞から取り出した染色体そのままの分子配向と形状を簡易に観察することを目的として、特殊な微細加工を施した樹脂製ディスポーサブルマイクロチップ上で、遠心力により、細胞の固定から、染色体の抽出、伸張、懸架、解析する方法を開発、病理細胞を用いた評価実験を行う。提案技術によって、非常に簡単な操作で、取り出した染色体そのままを従来にない高分解能で高速観察できるため、ゲノム構造に起因する遺伝子多型、エピジェネティック制御などの基礎的研究から、.遺伝性疾患などの臨床診断にまで幅広く利用できる可能性があり、操作者の負担軽減、診断時の患者の待機負担の軽減(POCT)、テーラーメイド医療につながる技術となる。 デバイスの主な特長は、ポア径数μm程度のマイクロメッシュ状の連続壁を同心円状に有するレコード盤型マイクロデバイスにあり、マイクロ橋脚構造上での染色体伸張に遠心力を用いる点にある。伸張原理は、チップの高速回転により染色体懸濁液に遠心力が働くと、流れ場の勾配により液中の染色体にせん断応力が作用し、糸鞠状の染色体がランダムにほぐされながら、メッシュ上部のV溝構造(橋脚)に、染色体が吊り橋状に懸架される。その後、染色体はV溝構造への物理吸着により懸架状態で固定され、FISH解析が可能である。 本年度は、本研究課題開始前に開発を済ませていた同心円メッシュ構造と同様の製作方法(固定マスク付き回転傾斜露光法)を用いて、同心円状に多数配置された細胞固定構造を作製した。さらに細胞固定効率を評価し、細胞を固定する最適形状の検討を行った。また、本申請前に基礎検討を済ませていた同心円メッシュ構造上での染色体の懸架について、診断時の解析容易性を検証するために、伸張形状の測定、伸張数のばらつき、FISH染色効率などを定量的に評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の研究項目は大きく3つに分かれており、(1)作製技術の構築、(2)細胞固定効率の評価、(3)懸架染色体解析の定量評価からなる。初年度に予定していた、(1)中の細胞固定構造試作と、(3)中の染色体伸張効率評価は、予定通り実験を終えている。また、(2)中の細胞固定効率評価は、初年度から次年度にかけて実施する計画であったが、(1)の構造作製が予定よりも早く進められたことより、(2)の効率評価も初年度中に終えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度中に個別に作製していた細胞固定構造と染色体伸張構造を集積した統合デバイスを一括露光により基板上にウエハサイズ(直径100mm程度)で作製する。また、加工技術の加工精度限界を検討するため、サブミクロンサイズのメッシュ直径を有する微細構造の製作を試みる。すべての操作をオンチップで行う細胞固定から染色体伸張までを集積した統合デバイスについては、ステップ毎の妥当性を確認しながら順に集積化を行う。最終年度では、複数種の病理モデル細胞を用いて、染色体診断技術としての妥当性を統合的に評価する。特に、必要に応じて、協力異分野研究室でのフィールド実験による操作性評価を行うことを予定している。
|