本研究は、高次構造を有する染色体をマイクロデバイス上で伸張懸架する、顕微鏡観察のためのプレパレーション技術の構築が目的であり、①細胞懸濁液の播種、②細胞の固定、③染色体の取り出し、④染色体の伸張固定、⑤染色体の可視化までを一つのチップ上で実施可能なマイクロデバイスを提案する。 研究期間内では、1)マイクロデバイスの作製技術の高度化(露光光源波長による加工構造の変化)、2)遠心力を用いた細胞の固定技術の定量評価、3)染色体伸張固定技術の定量評価を行い、さらに、最終的なデバイスについては、複数の病理モデル細胞株を用いてFISH(Fluorescent In Situ Hybridization)解析を行い、デバイスの実用性について検証を行う。 デバイスの主な特長は、ポア径数um程度のマイクロメッシュ状の連続壁を同心円状に有するレコード盤型マイクロデバイス(試作済みのデバイスサイズは、最終目標直径100mm程度を昨年度達成した)にあり、マイクロ橋脚構造上での染色体伸張に遠心力を用いる点にある。伸張原理は、チップの高速回転により染色体懸濁液に遠心力が働くと、流れ場の勾配により液中の染色体にせん断応力が作用し、糸鞠状の染色体がランダムにほぐされながら、メッシュ上部のV溝構造(橋脚)に、染色体が吊り橋状に懸架される。その後、染色体はV溝構造への物理吸着により懸架状態で固定され、FISH解析が可能である。 本年度は、昨年度中に試作した細胞固定構造と染色体伸張構造を集積した統合デバイスについて、各細胞からの染色体伸張を個別評価できるデバイスと、染色体伸張効率と構造微細性を定量的に検証するデバイスの2種を作製、評価した。
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