CO2低減の観点から,大規模な太陽光発電が注目されている.このため,多くの研究開発が行われているが,セルの発電効率向上といった中心的研究課題の他に,太陽電池パネルに堆積する粉塵が発電効率の低下を招くという,泥臭くも看過できない問題がある.すなわち,これらの発電システムは日照量の多い低緯度の砂漠地帯に設置するのが効率的であり,中東などで大規模な発電プラントが建設されているが,これらの地帯では砂塵がパネルに堆積し,しかも降雨がないので堆積した砂塵が除去されないで発電効率の低下を招くという問題がある. このため,進行波電界を利用した自動粉塵クリーニングシステムを開発した.このシステムは,パネル上に透明電極を印刷し,これに4相の高電圧を印加することによって進行波を形成し,この進行波の移動にともなって粉塵を静電搬送するシステムである.これまでわれわれはNASAと共同で月探査用の小規模システムを開発してきたが,宇宙用のシステムは小規模で経済性を無視したものであり,そのままでは地上の民生用には使えない.そこで本研究では,宇宙用のシステムを参考としながらも,まったく新しい方式を開発考案し,大規模な太陽光発電に適したシステムを開発した. この新しいシステムでは、クリーナを構成する電極と透明基板材料,電極構成と電源などに新しい技術を開発した.前者に関しては,広ピッチ線電極の埋め込み基板を,後者に関しては,正負高圧電源のスイッチング方式を開発した.また,進行波によって粉塵を一方向に搬送するためには,3相以上の多層交流でなければならないが,太陽電池パネルは傾いており,重力を利用することによって,単相交流でも搬送できるので,その方式について検討し,その有効性を確認した. なお月探査や電子写真への応用に関しても、粉塵が関与する問題について研究を行った。
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