研究概要 |
本研究では鉄系磁歪材料(Fe-Ga合金)を用いた小型の振動発電デバイスを開発し,これを用いた自動車用ワイヤレスセンサシステムを構築する。発電デバイスはシンプルで堅牢,高出力,高効率,低インピーダンス,高耐熱性が特徴で,自動車の振動を利用することで,高い発電を行うことが期待できる。これを電源とした配線や電池が不要なワイヤレスセンサシステム(タイヤ空気圧モニタシステムなど)を実現させることが本研究の目的である。本年度は磁歪素子一本とヨーク,コイル,永久磁石で構成されるシンプルで堅牢,低コストを特徴とするユニモルフ型の振動発電素子を提案し,その設計,製作,評価方法を確立した。複数のデバイスの試作を行い,小型のタイプでは400Hzの振動で10mWの平均電力(電力密度20mW/cm3,圧電素子の20倍以上),エネルギー変換効率15%,大型のタイプ(小型に対し体積比で1000倍)では自由振動にて10Wの瞬間電力と高い発電性能を実証した。またデバイスと整流回路,コンデンサ,照度センサ,マイコン,無線モジュールで構成されるワイヤレスセンサシステムの試作を行い,振動発電にて十分にセンサの情報を無線にて送信できることを確認した。またデバイスと励振機構を組み合わせた発電スイッチを提案,試作し,一回の押しボタンにて0.2~0.5mJの電気エネルギーを発生できることを実証した。以上の結果から,自律式ワイヤレスセンサシステムおよび電池がいらないリモコンの実現の可能性を実証した。また発電量が体積に比例するスケール効果を試作により実証したことで,デバイスの大型化で大きな発電が行える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
発電デバイスの原理や設計,製作方法を確立し,これらを試作にて実証した。またこのデバイスを用いたワイヤレスセンサシステムの動作も試作にて確認した。デバイスは実用的な構成で,既に複数の企業と商品化に向けた共同研究を開始している。また電池がいらないリモコンを実現させる発電スイッチも開発し,当初の目的以上の成果が出ていると思われる。
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