研究課題/領域番号 |
23360121
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究分野 |
電力工学・電力変換・電気機器
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高木 伸之 岐阜大学, 工学部, 教授 (80179415)
|
研究分担者 |
王 道洪 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20273120)
|
キーワード | 雷 / 落雷の予知 / 風力発電 / 空間電荷 |
研究概要 |
本研究では風力発電施設への落雷をその数秒前に予測することによって、風車本体と変圧施設やその先の電力系統とを完全に切り離すというこれまで行われてきた耐雷対策とは異なる新たな耐雷対策を確立することを目的としている。風力発電設備への落雷を予知するためには風力発電設備周辺の地上電界と雷雲下の空間電荷分布が分かれば可能となる。雷雲下の空間電荷分布をリアルタイムに測定する方法は開発されておらず、その技術開発を行うと共に、その結果から導かれる予知の妥当性を観測で確かめる。次の特徴の異なる次の4つの空間電荷分布測定法A.ファラデーケージ法、B.静電界遮蔽法、C.音波法、D.ドップラー・ライダー法を開発する。 本年度はA.ファラデーケージ法、B.静電界遮蔽法による冬季雷観測を平成23年11月末から平成24年1月末までの約二ヶ月間石川県内灘町の風力発電設備周辺において実施した。ファラデーケージ法は4カ所で静電界遮蔽法は1カ所で行った。C.音波法は室内実験により、実際の雷雲と同じ3極の空間電荷構造を作って、それぞれの電荷の位置と電荷密度を精度良く検出することに成功した。D.ドップラー・ライダー法については必要な光学素子とその配置・精度について検討した。 ファラデーケージ法によって観測された地上の空間電荷は電界とは逆極性となる場合が大半であり、電界の3乗に比例する。雷雲通過時の空間電荷密度は数ナノクーロン/m^3であり、電界が10kV/mのとき20nC/m^3に達する。3mの高さでの空間電荷密度は0mでの電荷密度の約60%であった。また、落雷時の急峻な電界変化が発生した時、空間電荷は1秒前後の時間遅れの後に大きく逆極性に変化することが分かった。静電界遮蔽法では金属ポールを8mの高さまで上昇させ、高さ8mまでの空間電荷密度を求めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雷雲下の空間電荷をファラデーケージを用いて多地点で計測することに成功、当初の予測通りの結果も得られている。この結果により落雷の予知が可能となる。従って、ファラデーケージ法については計画以上に進んでいる。静電界遮蔽法は空間電荷の測定に成功し、音波法は精度が向上し共におおむね順調に進展している。ドップラー・ライダー法は装置の設計までは可能であることが確かめられたが共用のレーザーの借りだし期間が短く実測できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
統計上意味のある数量のデータを獲得するため、数年間の観測は欠かせない。そのため、23年度の観測結果を踏まえた観測を24年度以降にも同様に実施する。これと並行して平成23年度の観測データの詳細な解析を行い、冬季上向き雷を予知するための雷雲内電荷と雷雲下の空間電荷を各風車落雷毎に求め、落雷発生の共通因子を洗い出す。ファラデーケージ法では高所での測定を1カ所から2カ所に増やし空間電荷密度の高度減衰の違いを調べる。音波法では高出力のスピーカを導入し測定感度の上昇を目指す。また、落雷時の空間電荷量を放電進展モデルより逆算する手法を新たに開発し、実測値と比較検討する。
|